主要畜産物の需給動向

◆牛 肉◆

●●●輸入品推定期末在庫量は、前年同月をかなりの程度上回って推移●●●

 牛肉の推定期末在庫量(当機構調べ)が前年同月をかなり大きく上回る水準で推移している(図1)。特に輸入品在庫が大幅に前年同月を上回っており、平成19年10月の推定期末在庫は、輸入品が67,271トン(前年同月比16.0%増)、国産品が10,347トン(同3.1%増)となり、合わせて77,618トン(同14.1%増)となった。その要因として、9月の豪州産冷凍牛肉の輸入量が前年同月の1.6倍に相当する22,267トンに達したことが挙げられる。この背景には、円安傾向が続いていた豪ドルの通関レートが9月に100円を割り込んだことなどから「売れずに滞留していた未通関在庫を通関させたため」との見方もあり(図2)、牛肉の未通関在庫(冷凍品)を見ると8月末の7,314トンから9月末には3,512トンと半分以下に減少している。一方、10月の牛肉輸入量は、生鮮・冷蔵牛肉が18,563トン(前年同月比7.3%減)、冷凍牛肉が17,515トン(同5.9%減)となり、合わせて前年同月をかなりの程度下回る36,169トン(同6.6%減)となったことから、在庫量は8万トンを下回った。

 (社)日本フードサービス協会によれば、10月の焼肉店の売り上げ(ファミリーレストラン業態、12事業者数、店舗数1,246店)は、前年同月比で7.3%減とかなりの程度減少した。このように、牛肉需要が振るわない状況下で牛肉期末在庫が前年同月を上回って推移している。

図1 牛肉輸入品在庫と未通関在庫(冷凍品)の推移


資料: 機構調べ


図2 豪ドル 通関レートの推移


資料:財務省

◆豚 肉◆

●●●国産品推定期末在庫量、平成13年以来の低水準●●●

 東京市場での豚肉卸売価格(省令)は、平成19年7月以降前年を上回って推移しており、通常、相場の底となる10月、11月の価格がキログラム当たり470円台と例年をかなり上回って推移している。今年の豚肉家計消費量は、かなり好調で総務省「家計消費調査」では、19年度累計(4−10月)が前年同期比3.4%増、機構調べの「POS情報」では同4.1%増となっている。

 特に、国産豚肉の推定出回り量は、例年11,12月に1カ月当たり8万トン台を超え、通常より1割増しになることから、本年も年末需要による出回り量の増加が見込まれる。

 一方、推定期末在庫の推移をみると10月に在庫全体が18カ月ぶりに前年同月を上回ったのに対し、国産品は、18年8月以降15カ月連続で前年同月を下回り、10月は前年同月比21.4%減の14,888トンとなった。国産品の在庫量が1万4千トン台にまで取り崩されたのは13年12月以降初めてであり、ひっ迫感が増している。(図3)

 平成13年度は子取り雌豚頭数の減少などからと畜頭数が下降線をたどった時期であり、また、国内初のBSE発生による牛肉の代替需要から豚肉の消費量が増加し、年度平均の卸売価格がキログラム当たり498円とかなり高水準となった年であった。

 農林水産省「食肉流通統計」によると、平成19年10月のと畜頭数は1,467千頭と前年同月を1.0%上回った。最近のと畜頭数は、7月に同6.4%増、9月は同6.2%減と月によって増減はあるもののほぼ前年並みに推移している。また、肉豚生産出荷予測でも19年10−12月は前年同期比1.0%増の4,477千頭、20年1−3月は同1.0%減の4,031千頭と予想されていることから、大幅な生産量増加はないものと見込まれるため、現在の在庫水準がしばらく続くものと思われる。

図3 推定期末在庫の推移(前年同月比)


資料:機構調べ


◆鶏 肉◆

●●●ももとむねの合計価格が960円と高水準が続く●●●

 農林水産省「ブロイラー卸売価格(東京)」によると平成19年10月のもも肉の卸売価格は1キログラム当たり615円(前年同月比6.4%高)、むね肉同270円(同18.4%高)、11月はそれぞれ670円(同13.0%高)、290円(同26.6%高)と高騰が続いている。

もも肉が600円台後半の高値を付けたのは19年1月以来10カ月ぶり、むね肉が290円を超えたのは13年2月以来の6年9カ月ぶりとなった。

 鶏肉の生産量は、国産志向の強まりが追い風となって、24カ月以上前年同月を上回った増産が続いており、一時、え付け羽数が前年同月を2.5%下回った(9月)ものの、10月は同3.3%増と増産意欲は衰えていない。

 一方、輸入品は、今後の年末需要を見込んで10月は、4カ月ぶりに3万トン台に回復した。さらに、鶏肉調製品に関しても、輸入量が7カ月連続して前年同月を上回って推移している中国に加えて、タイからの輸入量が10月は1万3千トン(前年同月比10.9%増)と増加し、合計で30,867トン(前年同月比11.8%増)となった。

 忘年会、クリスマスシーズンの最需要期に向け需要は更に強まると思われることから、高水準の卸売価格はしばらく続くものと見込まれている。

図4 鶏肉の卸売価格の推移(前年同月比)


資料:農林水産省「ブロイラー卸売価格」(東京)


◆牛乳・乳製品◆

●●●チーズの生産量、輸入量ともに増加傾向で推移●●●

 好調な消費動向に支えられ、チーズの生産量・輸入量が増加傾向で推移している。牛乳乳製品統計によると、チーズの生産量は平成19年4〜10月の累計で前年同期を1.7%上回る73,480トン、うち直接消費用ナチュラルチーズが同9.1%上回る10,214トンとなった。チーズの生産は、プロセスチーズの原料となるチェダーチーズやゴーダチーズが6割を占めるが、ワインのおつまみなどとして定着しつつあるカマンベールチーズなど直接消費用ナチュラルチーズの生産が増加している。

 財務省「貿易統計」による10月のナチュラルチーズの輸入量は、17,788トン(前年同月比6.1%減)と減少したが、19年度累計は120,716トン(前年同期比8.6%増)となった。同期間の輸入量を相手国別に見ると、豪州産が53,810トン(同10.6%増)、ニュージーランド産が34,141トン(同9.9%増)となり、全体の7割強を占めるオセアニア地域が輸入量増加を支えている。そのほか輸出補助金が削減されたEUのうち、ドイツ産は6,443トン(同1.4%減)オランダ産は4,404トン(同6.0%減)とともに減少し、アルゼンチン産が5,523トン(同79.8%増)と伸長した(図5)。

 一方、ナチュラルチーズのCIF価格を見ると、国際的な需給のひっ迫を背景に、上昇傾向が続いている。これは、ロシアなど経済新興国の乳製品需要が好調なこと、豪州において干ばつによりチーズの生産量が減少するなど国際的に供給量が不安定なこと、為替の円安傾向などが主要な要因として挙げられている。10月のCIF価格は、豪州産がキログラム当たり384円(前年同月比12.9%高)、ニュージーランド産が同390円(同18.1%高)となっている(図6)。


図5 ナチュラルチーズ 相手国別輸入量


資料:財務省「貿易統計」


図6 国別 ナチュラルチーズCIF価格




◆鶏 卵◆

●●●韓国で鳥インフルエンザが発生●●●

 平成19年11月26日、韓国において弱毒タイプの鳥インフルエンザ(H7亜型)の発生が確認されたことにより、農林水産省は韓国からの家きんおよび家きん肉等の一時輸入停止措置を行った。また、同24日には香港でも野鳥の死体から鳥インフルエンザH5N1型のウイルスが検出されている。

 アジア以外でも11月には英国(H5N1亜型)で12月にはポーランド(H5N1亜型)で発生が確認されており、ウイルスのまん延は今なお続いている。

 このような中、19年10月、社団法人全国家畜畜産物衛生指導協会から「高病原性鳥インフルエンザの発生を防止するために」(冊子)が発行された。これは全国の養鶏経営者に配布され、そこで働く各従業員にも「飼養衛生管理チェック表とポイント」が配布されている。

 18年は、11月23日に韓国で鳥インフルエンザ発生が確認され、その翌々月の19年1月に宮崎県で発生をみているが、早期発見、早期通報、早期処置などの対応により被害が最小限に食い止められたものと思われる。今後もその経験を生かし防疫対策、農家単位の畜舎周辺の整備などを行い、発生防止に万全を期すことが求められている。



出典:「高病原性鳥インフルエンザの発生を防止するために」
((社)全国家畜畜産物衛生指導協会)より抜粋


◆飼 料◆   

●●●9月の配合飼料生産量は、前年同月をかなりの程度下回る●●●

 農林水産省「流通飼料価格等実態調査」によると、平成19年9月の配合飼料生産量は8カ月ぶりに前年同月を下回る1,849,892トン(前年同月比5.3%減)となった。9月の配合飼料出荷量は1,874,814トン(同6.0%減)で、出荷先を地域別に見ると、九州地域が前年同月と比べかなりの程度減少し、497,903トン(同6.1%減)となっている(図7)。これは、主に宮崎県、鹿児島県向けの養鶏用配合飼料の出荷量が減少したことが影響したものとみられる。九州地域の養鶏用の出荷数量は、227,072トン(同8.1%減)で、うち育すう用が10,438トン(同7.9%減)、成鶏用が75,673トン(同9.2%減)、ブロイラー用が140,778トン(同7.7%減)となった(表1)。

 この結果、19年度上半期の生産量の累計は、11,653,240トン(前年同期比0.7%増)となっている(巻末資料参照)。生産量を畜種別に見ると、肉牛用が2,182,978トン(同3.2%増)、養鶏用が5,039,028トン(同1.2%増)、養豚用が2,837,844トン(同1.4%減)、乳牛用が1,551,399(0.2%減)となった。肉牛用と養鶏用が上半期の配合飼料生産量を押し上げた形だが、配合飼料の工場渡し価格は前年を大幅に上回る水準で推移しており、特に肉用牛肥育農家は枝肉卸売価格の下落から経営が圧迫されるなど、飼料需要への影響が懸念される。

図7 配合飼料 地域別出荷数量


資料:農林水産省「流通飼料価格等実態調査」


表1 九州地域の県別養鶏用配合飼料の出荷数量(19年9月)


資料:農林水産省「流通飼料価格等実態調査」


◆その他◆   

●●●食肉部門の農業産出額、宮崎県都城市が首位に●●●

 平成19年11月30日、農林水産省は「平成18年農業産出額(都道府県、市町村)」を公表した。

 これによると食肉部門(肉用牛、肉豚、ブロイラー)で産出額が最も多い県は鹿児島県で1,959億円(肉用牛800億円、肉豚730億円、ブロイラー429億円)となり各畜種ともトップで、全国の食肉部門の15%の産出額を占めた。同じく産出額がもっとも多い市町村は宮崎県都城市524億円で前年を108%上回った。これは、同市が18年1月に1市4町の市町村合併を行ったことによるものだったが同市の産出額は宮崎県の肉畜部門1,573億円の3割を産出する市町村となり、特に肉豚の産出額は宮崎県肉豚産出額の約半分を占めた。これにより同市は全国最大の食肉生産地帯となった。



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