◎新年のごあいさつ


独立行政法人 農畜産業振興機構
 理事長 木下 寛之

 明けましておめでとうございます。

 昨年は、穀物価格や乳製品の国際価格の高騰が相次ぐなど、畜産物を取り巻く国際情勢は大きく変化しました。この要因としてまず原油価格の高騰によるバイオ燃料の需要増加が挙げられます。世界のバイオエタノールの生産量は、2000年に約3千万キロリットルであったものが、2006年には5千万キロリットル、2007年には6千万キロリットルを超えると見込まれており、近年急増しています。中でも米国は世界第一位でバイオエタノールの約4割を生産していますが、その原料となるトウモロコシ需要が急増し、2007/08年度にはエタノール向けの割合は輸出向けを上回る約25%になると見込まれています。

 また、豪州の干ばつをはじめとする異常気象による穀物生産量の減少、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)をはじめとする新興国の急速な経済成長による食料需要の増大などから、国際的に穀物需給がひっ迫し、穀物価格は大きく値上がりしました。穀物の在庫率は低下傾向で推移しており、トウモロコシ価格は大幅に上昇し、シカゴ相場の先物価格はブッシェル当たり4ドルを超えるなど、穀物価格は当面高止まりで推移すると見込まれます。

 穀物需給のひっ迫により、アルゼンチン、ロシア、ウクライナなどの一部の国では、輸出規制を行い、自国への供給を優先させる動きも出てきています。さらに、EUでは穀物の輸入関税率を削減する提案もなされました。

 このような状況から、飼料用穀物も大きく値上がりするとともに、豪州の干ばつなどの影響により生乳生産量が減少する一方、新興国を中心に需要は拡大しているため、乳製品の国際需給はひっ迫しています。乳製品の国際価格は大幅に上昇し、脱脂粉乳や全粉乳はトン当たり5千ドルを超えるなど一昨年の倍以上に高騰する展開となり、EUでは脱脂粉乳や全粉乳に続き、昨年6月にバター、チーズの輸出補助金もゼロになるなどの状況も生じております。

 こうした中、当機構は、乳製品の国家貿易機関として、輸入乳製品の売買業務を的確に実施するとともに、海外5地域に配置した海外駐在員事務所などを通じて畜産物の国際需給の動向について情報を収集し、提供しました。さらに、外部の幅広い関係者を対象に飼料穀物の国際需給の現状と見通しについて海外駐在員による報告会を開催し、好評をいただきました。

 また、世界貿易機関(WTO)におけるモダリティ合意に向けた先進国や開発途上国などとの交渉が進められるとともに、豪州などとの経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)の締結に向けた動きが活発化しております。

 当機構といたしましては、こうしたことも踏まえ、今後とも各国における畜産物の需給動向や関係団体の動向などに関する情報の迅速な収集提供に取り組んでまいりたいと考えております。

 一方、国内の状況に目を移しますと、飼料穀物の9割を輸入に頼るわが国の畜産は、配合飼料価格の値上がりなどによる生産コストの増加を余儀なくされています。

 配合飼料価格(全畜種平均)は、19年4月以降1トン当たり5万円台を超えて推移しており、配合飼料価格安定制度による補てんは通常補てんが18年10〜12月期以降、また異常補てんも19年1〜3月期以降連続で発動されるなど厳しい状況が続いております。このような中、当機構では家畜飼料特別支援資金融通事業による飼料購入資金の借入に係る利子補給を実施しました。このように飼料価格の高騰が続く中、粗飼料生産の拡大やエコフィードの利用など生産コスト削減の努力がより一層求められております。

 国内の牛肉の需給事情についてみますと、乳用種や交雑種の枝肉価格の低下や配合飼料価格の上昇から肉用子牛価格が下落しており、平成19年度第2四半期には乳用種を対象に1年ぶりに補給金が交付されました。また、肉用牛肥育経営安定対策事業の補てん金(全国推計値)も乳用種が3年半ぶり、交雑種が4年半ぶりにそれぞれ交付されました。

 世界の食料需給が不安定さを増す中、食料安全保障の観点からも食料自給率の向上が強く求められているところですが、わが国の食料自給率は、平成18年度にはカロリーベースで39%と、平成5年以来13年ぶりに4割を下回る結果となりました。

 一方で、食の安全、安心に対する消費者の関心はさらに高まっており、農畜産物の国産志向の高まりが見られます。

 こうした状況の下、わが国の畜産業には、良質で安心・安全な畜産物の安定的な供給と効率的な生産・流通によるコストダウンへの一層の努力が求められていますが、当機構は、価格安定業務、畜産業振興事業、学校給食用牛乳供給事業の補助業務、国内外の情報収集提供業務など様々な業務を通じて、これらの課題への取組みを支援してまいります。

 当機構は、平成15年10月に独立行政法人として発足し、今日に至るまで皆様をはじめ関係各位の御協力により、順調な業務運営を図ることができたと考えております。

 当機構といたしましては、今後とも、業務の効率化、透明性の確保を一層推進するとともに、畜産業および関連産業の健全な発展と国民の消費生活の安定に寄与して参る所存でございます。

 本年が皆様にとって希望の持てる年となりますことをご祈念申し上げ、新年のごあいさつといたします。

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