需給動向 海外 |
生産の削減に向かう米国のブロイラー産業
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ブロイラーひな導入羽数は4月以降前年を下回る米国農務省全国農業統計局(USDA/ NASS)が公表する「Broiler Hatchery」によると、米国の主要19州におけるブロイラー向け週間ふ卵個数は2008年3月下旬から6月下旬にかけて13週連続で前年を下回った。また、ブロイラー向けひなの週間導入羽数には約3週間遅れの4月中旬頃から影響が現れており、直近の6月第4週(6月23日〜28日)まで11週続けて導入羽数が前年を下回って推移している。 これは、トウモロコシをはじめとする飼料原料価格の高騰を受け、需給環境の改善に向けて大手ブロイラー企業がブロイラーの生産削減に取り組んだことによる。(平成20年4月18日付け海外駐在員情報(http://lin.alic.go.jp/alic/week/2008/us/us20080418.htm)参照。) ふ卵個数は直近の6月第4週(6月23日〜28日)において約3カ月ぶりに前年同期を上回ったが(0.4%増)、トウモロコシや大豆の主産地である中西部の天候不順を背景に飼料穀物の価格は4月の水準を上回って推移しており、ブロイラー企業の収益性は厳しさを増していることから、さらなる生産抑制の可能性を念頭に、今後のふ卵個数およびひな導入羽数の動向が注目されている。 図1 ブロイラー種卵ふ卵個数とひな導入羽数(対前年増減率) ブロイラー処理羽数減で生産量も減少へUSDA/NASSの公表する「Poultry Slaughter」によると、2008年5月のブロイラー処理羽数は7億6,198万羽と前年同月を2.8%下回った。4月の処理羽数は暦の関係で操業日が前年より1日多かったこともあり前年同月を8.1%上回ったが、前述のとおりブロイラーひなの導入羽数は既に減少局面に入っており、USDA経済調査局(USDA/ERS)は同6月の処理羽数を前年同月比2.5%減の7億3,000万羽と推計している。 一方、2008年5月のブロイラーの出荷生体重量は5.60ポンド(約2.54キログラム)と前年を1.4%上回った。昨年11月以降、出荷生体重量の伸びは過去20年間の平均増加率(1.3%)を超えているが、USDA/ERSは2006年末から2007年初めにかけての出荷時生体重量の伸びが傾向値よりも小さかったことをその原因として挙げている。 これらの結果、2008年5月のブロイラー生産量(連邦検査ベース)は8カ月ぶりに前年同期を下回り、0.4%減の31億6,065万ポンド(約143万4千トン)となった。USDA世界農業予測ボード(USDA/WAOB)は本年第2四半期の生産量を前年同期比3.5%増の94億5,000万ポンド(約429万トン)と推測するとともに、本年第3四半期を同1.3%増、第4四半期は同0.9%減と予測し、生産が減少傾向に向かうとしている。 図2 ブロイラー処理羽数と出荷生体重量 鶏肉の小売価格は着実に上昇図3は2006年5月以降の鶏肉の卸売価格と小売価格の推移を示したものである。 図3 鶏肉の卸売価格・小売価格の推移 2008年6月のもも肉卸売価格(ホール)は前年同月を11.0%上回るポンド当たり70.5セント(キログラム当たり166円:1ドル=107円)となり、19カ月連続で前年を上回った。また、同年5月のもも肉小売価格(骨付き)もポンド当たり138.8セント(同327円)と前年同月を6.9%上回っている。 一方、2008年6月のむね肉卸売価格(ボンレス)は4カ月連続で前年同月を下回り、ポンド当たり139.4セント(同329円、前年同月比7.6%減)となった。これに対し、同年5月のむね肉小売価格(骨付き)はポンド当たり239.2セント(同564円)と前年同月を3.5%上回っており、卸売価格の下落にもかかわらず小売価格は上昇を続けている。 もも肉に比べてむね肉の卸売価格が軟調に推移していることについて、USDA/ERSは、むね肉は国内消費が主体となるため米国内の景気減速の影響が大きく、また、輸出拡大の恩恵も少ないことを理由として挙げている。さらに、2008年後半の価格動向については、生産量の減少や輸出の拡大が価格上昇要因となるものの、国内の景気動向や競合する食肉(牛肉や豚肉など)の価格動向を注視する必要があるとしている。 |
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