需給動向 海外

◆米 国◆

米国の豚肉生産は2008年末にかけて減少局面へ


◇絵でみる需給動向◇


繁殖母豚の頭数は3年ぶりに前年を下回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA/ NASS)が6月27日に公表した「Quarterly Hogs and Pigs」によると、本年6月1日現在の豚総飼養頭数は前年を5.8%上回る6,766万1千頭となった。しかし、繁殖母豚の頭数は606万9千頭にとどまり、前年を0.8%下回った。

 米国の繁殖母豚頭数は、一腹当たり産子数の増加など生産性の向上を背景に長期的には減少傾向で推移してきたが、2004年以降、養豚経営の収益性が改善される中で2005年3月を底に増加に転じ、本年3月まで12四半期連続で前年の頭数を上回っていた。

 しかし、飼料穀物価格の上昇などにより、養豚経営の収益性は急速に悪化しており、本年2月には米国最大の養豚企業であるスミスフィールド社が繁殖母豚の5%削減を公表するなど、生産削減の動きが始まっていた。(平成20年5月7日付け海外駐在員情報(http://lin.alic.go.jp/alic/week/2008/us/us20080507.htm)参照。)

図1 繁殖母豚飼養頭数と前年同期比の推移

当面の肥育豚出荷頭数は高水準が続く見込み

 一方、6月1日現在の肥育豚の飼養頭数は前年比6.5%増と引き続き増加を続けている。特に、主に本年第3四半期(7〜9月)に出荷時期を迎える肥育中後期豚の飼養頭数の増加率が高く、180ポンド(約81.6キログラム)以上の肥育豚は同10.2%増(1,093万1千頭)、120〜180ポンド(約54.3〜81.6キログラム)は同9.5%増(1,290万7千頭)となっている。

 これに対し、主に本年第4四半期(10〜12月)に出荷時期を迎える肥育前期豚の増加率は低く、60〜120ポンド(約27.2〜54.3キログラム)の肥育豚は同5.8%増(1,516万7千頭)、60ポンド未満のものは同3.7%増(2,258万7千頭)にとどまっている。

 本年5月の豚と畜頭数は906万3千頭(前年同月比3.4%増)、豚枝肉生産量は18億1,560万ポンド(約82万4千トン、同3.0%増)となったが、USDA経済調査局(USDA/ERS)は6月のと畜頭数を前年同月比6.4%増の883万2千頭、豚枝肉生産量を同6.5%増の17億6,200万ポンド(約79万9千トン)と推計している。また、USDA世界農業予測ボード(USDA/WAOB)は、本年第3四半期の枝肉生産量を前年同期比7.8%増(56億6,500万ポンド:約257万トン)と予測する一方、第4四半期は同0.6%増(62億ポンド:約281万2千トン)にとどまるとしている。

図2 肥育豚頭数の重量別前年比の推移

飼料価格の上昇の影響で子豚価格と廃用豚価格は大幅に下落

 図3は豚の生体価格の推移を養豚経営が黒字に転換したとされる2004年の平均価格を100とする指数で表したものである。

図3 豚生体価格の推移(2004年平均=100)

 肥育豚の農家販売価格は、2004年の平均で生体100ポンド当たり49.8ドル(キログラム当たり117円:1ドル=107円)であったが、その後も季節変動を伴いながらおおむね上下10ドルの範囲内で比較的安定して推移してきた。本年6月の肥育豚価格は同54.7ドル(同129円、前年同月比0.7%安)であり、生産の増加を順調に拡大する輸出が支えていることがうかがえる。

 子豚の農家購入価格は、冬場に上昇し夏に向かって低下する傾向があるが、2007年末から2008年初めにかけては、2004年平均の農家購入価格である生体100ポンド当たり115.0ドル(同271ドル)を上回ることなく、その後の季節的な価格下落局面に入った。本年6月の子豚価格は同86.0ドル(同203円)と前年同月を26.5%下回っており、昨年10月以降、9カ月連続で前年同月の価格を2割以上下回っている。また、廃用豚の価格も低迷が続いており、本年6月の農家販売価格は生体100ポンド当たり27.5ドル(同65円)と前年同月を26.5%下回っている。


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