めす牛と畜頭数の増加により牛肉生産量が低下ブラジル牛肉輸出業協会(ABIEC)によると、2008年のブラジルの牛肉輸出量については、前年比2割減の175万トン(枝肉ベース、前年219万トン)と見通している。2008年1〜5月の輸出量をみると前年同期比27.7%減の32.8万トン(枝肉ベース、前年同期45.4万トン)と大幅に減少しており、また加工肉も同様の傾向を示している。 この理由について、ブラジル畜産関係者に尋ねたところ、EU向け輸出の停滞も一因であるが、牛肉生産量の減少が大きな要因であり、子牛価格とめす牛と畜頭数の関係からみられるキャトルサイクルの影響により、増加基調に転じるのは2009年に入ってからと見ているとのことであった。
○ 2002年以降のキャトルサイクル
資料:FNP社 輸出単価の上昇から輸出額は増加見込みまたABIECは、2008年の輸出額について、前年比1割増の46.0億米ドル(4,940億円:1米ドル=107.4円、前年41.8億米ドル(4,489億円))と見通している。2008年の1〜5月の冷蔵・冷凍牛肉のFOB輸出価格は前年同期比45.6%高の1トン当たり2,718米ドル(29万円、前年同期1,867米ドル(20万円))と大幅に増加している。しかしながら、レアル高の進行により、レアルベースにすると小幅な上昇にとどまっており、生産者の販売収入の大幅な増加にはつながっていないと見られる。 以下の表は2006年のブラジルの肥育牛経営の収益についてFNP社が行った試算である。これを見ると、支出に占める家畜導入費の割合が大きい。このように生産費に大きな影響を与える子牛価格の大幅な上昇に比べ、輸出価格の上昇は小幅であるため、現状程度の輸出価格の水準では、収益を利用して積極的に牛肉生産を拡大する意欲にはつながっていかないと見られる。 ブラジルでは年間1人当たり牛肉を37キログラム消費するため、牛肉の国内価格の上昇はインフレ指数に大きな影響を与える。牛肉の国内価格は徐々に上昇しているが、輸出量が増加すればさらなる国内価格の上昇を招く可能性があるため、現状の中で政府が積極的な輸出促進策をとることは考えにくい。 このような状況から、当面の間、ブラジルの牛肉輸出量は、減少傾向が続くと見られる。
○ 牛肉の輸出価格
資料:ブラジル開発商工省貿易局(SECEX) ○ ブラジルの肥育牛経営の収益(2006年) 資料:FNP社 ○ 牛肉の小売価格 資料:農業経済院(IEA) |
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