需給動向 海外

◆豪 州◆

ロシア向け急増など急速に変化する牛肉輸出市場


◇絵でみる需給動向◇


東南アジア向けなどが伸びる中で、急速に変化する輸出市場への対応が必要

 2008年に入り豪州産牛肉の輸出状況は、南米の牛肉生産国との競合や韓国市場に対する米国産牛肉の輸出再開問題、また、主要通貨に対して豪ドル高で推移する為替相場の影響などにより、環境はより厳しさを増している。この状況について豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)では、急速に変化する輸出市場に対応することが、牛肉産業にとって必要としている。2008年1〜4月までの豪州産牛肉の輸出状況を見ると、最大の輸出先である日本向けが前年同期比8%減、米国向けが同35%減、韓国向けが同5%減と、主要輸出先のいずれでも輸出量が減少した。一方、中国および東南アジア向けは、輸出量は少ないものの同16%と高い伸びをみせている。

相手先別豪州産牛肉輸出量(1〜4月)

ブラジルでの疾病などによりロシア向け輸出が急増、今後は、価格次第で一定量を確保

 連邦政府の農漁林業省が6月4日に公表した農畜産物貿易統計によると、2008年5月のロシア向け牛肉輸出量は1万7,557トン(船積重量ベース)と、ロシア向けとしては単月ベースで過去最高水準になった(昨年同月の輸出実績は87トン)。豪州からのロシア向け牛肉輸出は、ロシアの最大の輸入国であるブラジルでの疾病問題などにより2008年4月にロシアが輸入禁止措置を講じたことから急激に増加しており、4月の輸出量は8,426トンと大きく伸びた。5月の国別輸出実績をみると、原油価格が高騰を続ける中で原油産出国の一つであるロシアがその資金力を背景に冷凍物を中心に積極的に買い進めた結果、豪州の主要輸出先である米国、韓国を抜き、日本の3万4,768トンに次ぐ第2位の輸出先に躍進した。豪ドル高などで牛肉輸出が伸び悩む豪州にとって、突然、大きな輸出市場が登場する形となった。

 6月に入りロシアは、ブラジルの一部州からの牛肉輸入を解禁したことから、豪州にとって今後のロシア向け輸出は、不透明な状況となっている。しかし、ブラジル産牛肉の輸出価格は上昇傾向にあり、豪州産との価格差も縮小しつつあることから、今後の状況次第では引き続きロシア向けに一定の輸出を確保できるとの見方も出ている。主要輸出先である日本、米国、韓国向け輸出が伸び悩む中で、ロシアを含め、東南アジアなど新たな輸出市場の確保が牛肉業界にとって最大の関心事項である。

5月のと畜頭数は2002年以来の高い水準、極端に少ない降雨が要因

 豪州国内の生産状況を見ると、2008年3月から5月後半にかけて、主要肉牛生産地帯であるクイーンズランド(QLD)州やニューサウスウェールズ(NSW)州北部で、平年に比べて極端に降雨量が少なかったことから、放牧環境の悪化に伴い肉牛の出荷が急増していた。これに伴いと畜頭数も大きく伸びており、特にQLD州では、5月のと畜頭数が大規模な干ばつとなった2002年以来の高い水準となり、2006年、2007年同月比をそれぞれ30%以上も上回る結果となっている。5月末から6月に入りこれら生産地では断続的な降雨が続いていることから、これらの州内の生体市場における肉牛の出荷頭数が減少し、肉牛価格は回復基調に転じるとともに、牛肉生産量も平年ベースに落ち着いてきた。


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