需給動向 海外

◆豪 州◆

フィードロット飼養頭数、若干の回復ながらも引き続き低水準


◇絵でみる需給動向◇


 豪州フィードロット協会(ALFA)は4月14日、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)との共同調査による四半期ごとの全国フィードロット飼養頭数調査結果を発表した。これによると、2008年3月末時点の総飼養頭数は60万4千頭となり、前回調査(2007年12月末)に比べて3.3%増加したことで、4期連続した飼養頭数の減少に若干の歯止めがかかる形となった。しかし、前年同期と比べると、飼養頭数は依然として大幅な落ち込み(30.8%減)が続いている。

 一方、フィードロットの稼働率は、過去最低の水準にまで落ち込んだ前回調査(50.7%)とほぼ同じく50.9%と低調な水準であった。これは、フィードロット全体の収容能力(許認可ベース)が今後の東南アジアでの需要拡大などを見込んで118万7千頭(前回調査から3万頭以上の増加)と拡大したことを受けてのものである。


QLD州など主要産地での飼育頭数減少が最大の要因

 今回の調査結果について州別の飼養頭数を見ると、輸出向け生産の主要拠点であるクイーンズランド(QLD)州が前回調査に続いて減少したほか、ビクトリア(VIC)州でも減少となった。また、その他の州については、小幅な増加にとどまっている。中でもQLD州では、前年同期に比べて14万7千頭減、今回調査で小幅な増加となったニューサウスウェールズ(NSW)州でも同9万頭減と、いずれも主要生産地での減少が目立っており、これらが、フィードロット全体の飼養頭数を低迷させる大きな要因となっている。

州別のフィードロット飼養頭数(推移)

穀物価格の低下が回復要因、一方で厳しい状況が続く輸出環境

 今回の調査で飼養頭数が若干の回復をみせたことについてALFAでは、この四半期でフードロットでの飼料原料となるソルガムや大麦の価格が、それぞれ23%安、17%安になったこと要因に挙げている。これにより、依然として高い水準を維持する素牛価格や豪ドル高で推移する為替相場に対して、わずかであるが相殺要因になったとみている。ちなみに一般的にフィードロットで肉牛1頭に対する飼料給与量は、1日当たり平均30〜40キログラムとされており、このうちの約半分(15〜20キログラム程度)が穀物原料と見られている。このため、年間平均1万頭を肥育するフィードロットでは、飼料穀物価格が1トン当たり1豪ドル上昇すれば、全体として年間で最低5万5千ドル(550万円:1豪ドル=100円)のコスト負担が発生する計算となる。

 一方で、主要輸出先である日本、韓国、米国向けの穀物肥育牛肉の輸出量(2007年6月〜2008年3月)は、2007年同時期と比較してそれぞれ、22%、27%、52%の減少となっており、輸出環境は引き続き厳しい状況にある。MLAでは、輸出向けの飼養頭数は、前年同期と比べて30%も落ち込んでおり、輸出市場での豪ドル高で推移する為替相場の影響や米国産牛肉との競合をその要因に挙げている。

 今後の見通しについてALFAでは、世界的な穀物生産の拡大が予想されることで、飼料価格の低下が期待できることからフィードロットの経営環境は改善に向かうとしながらも、エタノール生産に対する各国の支援が続けば、状況は引き続き厳しいとして、豪州での穀物原料を用いたエタノール生産の拡大に対し警戒心を強めている。


元のページに戻る