需給動向 海外

◆豪 州◆

乳価上昇などを背景に、回復基調に向かう2007/08年度の生乳生産


◇絵でみる需給動向◇


第3四半期までの生乳生産、前年度比5.6%減で推移

 デイリー・オーストラリア(DA)が発表した最新の生乳生産統計によると、2007/08年度第3四半期まで(7〜3月)の生乳生産量は、前年度比5.6%減の741万500キロリットルになった。今年度の生乳生産は、年度開始当初より前年度の大規模な干ばつによる乳牛の早期淘汰(とうた)などの影響を受けて、主要生乳生産地帯を抱えるビクトリア(VIC)州やニューサウスウェールズ(NSW)州では、飼養頭数が大幅に減少する中でのスタートになった。また、これに加え、クイーンズランド(QLD)州北部やNSW州内陸部の生乳生産地帯では、引き続き干ばつが続いたことから放牧条件はさらに悪化し、豪州全体の生乳生産に大きな影響を及ぼしていた。

生乳生産の推移(VIC州)

生乳生産の推移(豪州全体)


天候回復や高い乳価に刺激され、VIC州などの生乳生産は徐々に回復

 生乳生産の状況を地域別に見ると、豪州の生乳生産量の約7割弱(2007/08年度第1〜3四半期実績)を産出するVIC州では、北部酪農生産地帯で放牧条件が大幅に悪化したことに加え、東部、西部の酪農地帯でも比較的降雨量が少なかったことから、一時期は、ここ数年で最低の生産水準であった前年度実績をさらに1割以上も下回った状態が続いていた。しかし、第2四半期以降、北部以外の酪農地帯で一定の降雨が記録され、これにより放牧条件が改善されたことから、生乳生産量は徐々に上向いてきた。また、北部地域でも、放牧条件は引き続き悪いながらも、乳製品国際価格上昇の恩恵を受けて乳価が過去最高水準にまで上昇していることで、酪農家の生産意欲が刺激され、購入飼料の積極的利用などにより酪農生産は徐々に回復をみせている。

 一方、NSW州では、沿岸酪農生産地帯は比較的順調な生産が続いており、また、内陸部を含めVIC州同様、生産者は高い乳価に刺激され、前年度水準を下回りながらも、飼養頭数、生乳生産量はいずれも上向きとなっている。

 このため、一時は前年度比で2ケタの生乳生産減少が心配されたが、全体的には回復基調にある。


国際相場を反映して乳価は過去最高水準、酪農家の経営状況も好転

 2007/08年度当初の乳価は、生乳生産量の回復が見られない中で、乳製品国際価格が高い水準で推移してきたことから、乳業メーカー各社は一定の原料乳量を確保するため、例年に比べて高い水準での開始となった。その後、乳製品国際価格が引き続き高止まり傾向にあることなどから、度重なる乳価の引き上げを行い、現在の水準はVIC州北部で1リットル当たり50〜55豪セント(50〜55円:1豪ドル=100円)台と、過去最高水準にまで上昇している。一時期に比べ、乳製品国際価格は落ち着きをみせているが、依然として需要は高いことから、冬場を迎えて生乳生産は下火となる中で、乳業メーカー各社は、引き続き乳価引き上げの動きをみせている。豪州農業資源経済局(ABARE)が4月末に公表した最新の農家経営動向によれば、この乳価上昇により、2007/08年度の酪農家の経営状況は、穀物、畜産などの分野を上回る収益を見込んでいる。


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