欧州委員会は2008年4月4日、2007〜2014年におけるEUの主要農産物の需給に関する中期予測を公表した。なお、今回の見通しは2007年12月までの需給統計や施策などを基に行われており、今後の施策や貿易ルールの変更などは考慮されていない。
2014年の域内穀物生産量、2007年から5千万トン増の3億570万トンの予測
EUの穀物生産は、干ばつなどの天候不順の影響により、2006年、2007年と連続して不作となった。この間、国際相場の上昇、域内の在庫水準の低下などにより域内の穀物価格は大きく上昇し、このような事態に対応するため、EUでは2007年秋および2008年春には種する耕地について義務的休耕率をゼロとすることを決定した。このため、穀物価格が高い水準にあることも相まって、2008年の穀物生産量は前年比15%増の2億9,440万トンと大幅に増加すると予測している。2009年には2億8,820万トンと一時的にわずかに減少するものの、その後は微増傾向で推移し、2014年には2007年比19.4%増の3億570万トンに増加すると予測している。
なお、この間の生産量増加は、主に休耕地におけるバイオ燃料生産用穀物の生産増加によるものであり、作物別に見ると、小麦とトウモロコシの生産増加による。
消費量の増加は、主にバイオ燃料生産利用の増加に起因
穀物の消費量は、見通し期間中、微増傾向で推移し、2014年には2億8,550万トンと、2007年と比較して1,990万トン増加すると予測している。この間、飼料用や食品・工業用はほぼ同水準で推移すると予測している。一方、バイオ燃料生産用は、穀物消費全体に占めるシェアは少ないものの、2007年の190万トンから、2014年には1,840万トンと大きく増加するとし、消費量増加の最大の要因となっている。この背景には、輸送部門におけるバイオ燃料などの利用促進のための「バイオ燃料指令」の実行に向け、バイオエタノール生産の増加を予測していることがある。
飼料利用は安定して推移
EUにおける穀物消費の約6割を占める飼料利用は2007年の1億6,520万トンから、2014年は1億6,850万トンとほぼ同水準で推移すると予測している。
この要因としては、
(1) 2004年5月以降の加盟国を中心に家畜の品種改良が進み、飼料要求率が改善される結果、これまでと比べ少ない飼料で畜産物の生産が可能になること、
(2) 豚肉、鳥肉、卵の消費の伸びがこれまでと比べ鈍化する結果、生産の伸びも鈍化すると予測していること、
(3) 見通し期間中の穀物価格が比較的高水準で推移すると見込む中、安価なタンパク質飼料としてバイオ燃料生産に伴う残さの利用が進むと予測していること
を挙げている。
品目別には、トウモロコシの介入買入を2009年までに段階的に廃止することに伴い、2008年以降、価格の低下が起こりトウモロコシの飼料利用の優位性が増すとしている。
穀物輸出は増加傾向で推移
世界の穀物市場は今後も好調に推移すると見込まれ、この結果、EUの穀物輸出は2007年の1,800万トンから、2014年には2,890万トンに増加すると予測している。品目別には、輸出量の最も多い小麦が、2010年の1,890万トンをピークに、2014年には1,500万トンに減少すると予測する一方、大麦とトウモロコシの輸出量は増加するとしている。
なお、この輸出量増の予測の前提として、
(1) アフリカ、中東および東南アジアにおいて穀物輸入量が増加すること、
(2) 米ドルの対ユーロ為替相場が改善されること、
(3) 穀物の主要輸出国のバイオエタノール生産が急速に拡大し、その結果、世界の穀物市場においてEUの輸出シェアが拡大すること
を挙げている。
EUにおける穀物需給予測
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