キャッサバ、オイルパームなどが増収の見込み
タイ農業・協同組合省(MOAC)は、米やトウモロコシなど主要作物の2008/09年度の収穫予想を公表した。これによると、米(一期作)は前年同期比0.9%増の2,359万トン、トウモロコシは同3.0%増の371万トン、大豆は同0.3%増の21万トンの収穫を予想している。同国では、畜産や養殖などの生産量が増加しているため、トウモロコシなどの飼料用需要が増加している。トウモロコシについては、2007/08年度において作付面積が減少したため生産量も同3.1%減となったが、今期は作付面積、生産量ともに増加に転じている。07/08年度にトウモロコシ生産量が減少したのは、トウモロコシ生産者がキャッサバへ転作したことがその理由とされている。
作付面積および生産量推移
また、近年、地球温暖化対策などの環境問題に対する関心の高まりや、原油の代替需要などにより、バイオマスエネルギー関連作物の需要が増加している。タイ国内でも世界的な需要増を反映し、バイオエタノールの原料となるキャッサバが同4.7%増の2,867万トン、バイオディーゼルの原料となるオイルパームが同19.5%増の787万トンを見込んでいる。オイルパームについては、同国政府が2012年までの5カ年計画で生産性を上げることを目標としているほか、農家に対する低利融資の実施により生産増を図るとしている。
農産物の生産者販売価格は上昇傾向が継続
MOACが公表した作物などの3月分生産者販売価格では、トウモロコシが前年比18.8%高のキログラム当たり8.38バーツ(約28円:1バーツ=3.4
円)、大豆価格が同55.0%高の同16.82バーツ(約57円)となり、トウモロコシの生産者販売価格については、2006年4月以降、前年同月を上回って推移している。トウモロコシなど飼料用作物については、今後も価格の上昇が予想されるため、原油価格の高騰など生産コストの上昇による同国農業への影響が懸念されている。
さらに、バイオマスエネルギー関連作物についても、バイオエタノールの原料となるキャッサバの3月分生産者販売価格は、同78.9%高の同2.20バーツ(約7円)となり、2006年11月以降、前年同月を上回って推移している。また、バイオディーゼルの原料となるオイルパームについては、今年1月をピークに価格は低下傾向に転じているものの、同59.5%高の同4.85バーツ(約16円)となり依然として高値で推移している。同国におけるエタノールの生産能力は、現在1日当たり160〜170万リットルとされているが、関係者によれば需要量は同60〜70万
リットル程度であるため供給過剰になるケースもあるとしており、政府によるガソホール(ガソリンとエタノールの混合燃料)の使用奨励策などが期待されている。また、原料の高値継続によるコスト上昇も大きな問題となっている。
穀物等生産者販売価格推移
国産価格の上昇により近隣諸国における生産を強化
MOAC農業経済局によれば、タイ国内における2006年のトウモロコシ生産量は365万トンとなっており、また、飼料用の輸入が約15万トン、輸出が約25万トンとなっている。
現在、タイではACMECS(イラワジ・チャオプラヤ・メコン経済協力戦略)のプロジェクトの一環として、カンボジア、ラオス、ミャンマーからトウモロコシなどの特定農産物を輸入する場合、政府の承認を受けたタイ側企業との委託栽培契約に基づくものについては、輸入関税を免除する措置を実施している。現在の関税免除措置は2008年4月までとなっているが、このような特例措置により、2007年のタイにおける飼料用トウモロコシの輸入量については、その9割以上がカンボジア、ラオス、ミャンマーの3カ国からとなっており、その内訳は、カンボジアが約7万8千トン、ラオスが約6万2千トン、ミャンマーが約1万トンとなっている。
タイ最大手インテグレーターであるチャロン・ポカパン(CP)グループは、従来から生産コストの安いACMECS加盟国(カンボジア、ラオス、ミャンマーおよびベトナム)においてトウモロコシの委託契約栽培を実施しているが、国産トウモロコシ価格の上昇傾向が続いているため、今後もACMECS加盟国における飼料作物生産を強化する方針としている。
※ACMECS(Ayeyawady - Chao Phraya - Mekong Economic Cooperation Strategy)
2003年4月にタイのタクシン首相(当時)の提案に基づき、同年11月に第1回目の会合が開催されたことに始まるタイの南南協力体制。現在の参加国は、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイおよびベトナムの5カ国。
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