需給動向 海外

◆カナダ◆

大幅な減少が続くカナダの豚飼養頭数


飼養頭数は1年間で1割以上減少

 カナダ統計局によると、本年7月1日現在のカナダの豚飼養頭数は前年同月比11.6%減の1,298万5千頭となった。これは2000年1月以来の低い水準であり、2006年7月以降、9四半期連続で前年の飼養頭数を下回った。

 このうち、全体の9割を占める肥育豚の飼養頭数は前年同月を12.4%下回る1,149万2千頭となった。特に、大消費地から遠く、昨年6月に大手パッカーの食肉処理場が閉鎖されたサスカチュワン州では、全国平均を大きく超える20.8%の減少率となっている。

 一方、繁殖めす豚(交配済未経産豚も含む)の飼養頭数は146万2千頭と前年比4.6%減にとどまった。カナダ政府は昨年11月1日から本年11月30日までの間、母豚のとう汰に対する助成事業を実施して15万頭の頭数削減を目指しているが、7月1日時点では昨年10月1日に比べ5万頭しか頭数は減少しておらず、多くの関係者の予想ほど繁殖めす豚は減少していない。

図1 カナダの豚飼養頭数

図2 カナダの肥育豚飼養頭数の前年比増減率


2割近くの養豚農家が経営を停止

 7月1日現在のカナダの養豚経営戸数は8,740戸で、前年同月から18.7%減少した。2000年以降、養豚経営戸数は年率4〜8%台の減少が続いてきたが、飼料価格の高騰やカナダドル高などによる経営環境の悪化から、昨年秋以降の経営停止が急増しており、2008年に入ってからは3四半期連続で前年比10%を超える減少が続いている。

 地域別に見ると、フランス語文化圏で域内での生産・消費の割合が高いケベック州を除き、多くの州で養豚戸数の大幅な減少が続いている。特に、大規模の先進的な繁殖経営が多く、肥育豚も含めて生体豚の6〜7割を米国のコーンベルト地帯に輸出してきたマニトバ州でも、多くの養豚農家が経営を停止していることが注目される。

図3 カナダの養豚農家戸数

図4 カナダの養豚農家戸数の前年比増減率


構造変化に対応した出荷・販売先の多様化

 図5はカナダの豚の年間生産・出荷頭数を仕向先別に示したものである。

 1980年代初めまで、カナダの養豚は国内向けの生産が主体であった。しかし、ガット・ウルグァイラウンド合意による穀物の輸出競争力の低下を受け、平原州の政府が養豚振興に力を入れたことで、1990年代中頃から輸出向けの豚肉生産が大きく拡大した。その後、2000年代に入って州政府による環境規制が強化され、飼養頭数の拡大が困難になってからは、肥育豚の頭数を抑えて米国向けの素豚供給を増やすことで、豚の生産頭数の維持・拡大が図られてきた。現在、北米で生産される豚肉の2割以上は、カナダで生産された子豚が肥育されたものである。

 カナダの養豚経営は、技術的に極めて高い水準にあり、繁殖母豚1腹当たりの離乳頭数は米国を大きく上回っている。また、1頭当たり枝肉重量も上昇を続けている。情勢の変化に柔軟に対応することにより、産業として発展してきたカナダの豚肉業界が、カナダドル高や飼料価格の高騰といった課題にどのように対応していくのか、今後の動きが注目される。

図5 カナダの豚生産・出荷頭数と1頭当たり枝肉重量

図6 北米の繁殖母豚一腹当たり離乳頭数


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