需給動向 海外

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2008年の牛肉輸入量はブラジル産を中心に大幅減で推移


◇絵でみる需給動向◇


2003年よりEUは牛肉の純輸入地域に

  1990年代までEUは多くの牛肉を域外に輸出していたが、年々牛肉の輸出量が減少する一方、輸入量は着実に増加しており、2003年より輸入量が輸出量を逆転し、現在は牛肉の純輸入地域となっている。この牛肉の輸出量の減少傾向は、域内の牛肉生産量が年々減少していること、域内での牛肉価格が堅調で推移していることおよび域外における価格競争が激化していることが影響していると考えられる。

  EUでは肉用牛生産の約7割を酪農経営から生産される乳用種に依存しているが、EU全体のクオータが維持される中で1頭当たりの乳量が年々増加した結果、従来よりも少ない頭数での酪農経営が可能となり、生産される乳用種が徐々に減少するという状況が続いている。既報(「畜産の情報」2008年8月号)のとおり、2007年のEUにおける肉用牛飼養頭数は前年比で0.8%増加し、これまでの減少傾向に歯止めがかかったところであるが、今後の肉用牛飼養頭数の動向は酪農の生産規模によるという構造には変化はないと考えられる。

EUにおける牛肉・生体牛の輸出入量の推移


2008年(1〜4月)における牛肉の輸入量は前年比38.5%減

  EUにおける牛肉の主要な輸入国はブラジル、アルゼンチンおよびウルグアイの南米3カ国であり、2007年はこれらの3カ国で全体の輸入量の9割を占めるに至っている。しかしながら、2008年に入りこの構造に変化が生じている。

  最大の要因は、最大の輸入国であるブラジルからの輸入の減少である。EUは輸出国に対し、牛肉のトレーサビリティについてEU域内と同等の水準、すなわち、生体牛までのトレースバックを求めているが、昨年実施されたEU当局によるブラジルの現地査察の結果、多くの農場でこのトレースバックのシステムが定められた基準を満たさないとされた。2007年12月に、EU側が基準を満たさないとされたこれらの農場由来の牛肉の輸入停止措置を講じるとの判断を下したことにより、ブラジルからの輸入量が急減している。

  2008年1〜4月の輸入量を見ると、ブラジルは前年同期比56%減と大幅に減少し、2番手のアルゼンチンも政府が国内需要を満たすため牛肉の輸出をコントロールした影響でEUへの輸出を拡大できなかったとされている(同11%減)。この間げきを縫う形でこれまで3番手であったウルグアイからの輸入が増加しているものの(同55%増)、ブラジルからの輸入減をカバーするまでには至らず、全体の輸入量は同38.5%減少となっている。

南米産牛肉への依存は今後も続く見通し

  前述のようなブラジル産牛肉の輸入制限措置が講じられているものの、EUはOIE(国際獣疫事務局)による口蹄疫の清浄地域認定(ワクチン接種および非接種)を受け、適宜輸入可能な品目・地域の見直しを進めており、今後とも南米産牛肉を安定的に輸入する環境の整備を進めている。米国産牛肉がホルモン牛肉問題でEU域内ではほとんど流通していないこと、オセアニア産牛肉の主要な輸出先は環太平洋の日本、米国、韓国などとなっていることから、家畜疾病の発生などにより多少の輸出国間のシェアの変動はあるものの、EUの南米産牛肉への依存は今後も続く見通しである。

EUにおける牛肉・生体牛の輸入量の推移


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