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戸数が増加する一方で二極化が進展する米国の農業経営


 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)は2月4日、2007年農業センサスの結果を公表した。2002年以来5年ぶりとなった今回の調査により、米国の農業経営戸数がわずかに増加していること、また、農外収入に依存する小規模経営と企業的な大規模経営の二極化が進展していることが明らかになった。

小規模の兼業農家の増加で経営戸数は前回調査を3.6%上回る

 2007年の米国の農業経営戸数(注1)は220万4,792戸となり、前回2002年の戸数を75,810戸(3.6%)上回った。このうち、年間販売額2,500ドル未満の小規模経営が全体の40.8%を占める90万327戸となり、前回を8.9%上回った。また、年間販売額50万ドル以上の大規模経営は、前回から64.6%増加して11万6,286戸となった。

 一方、年間販売額2500ドルから25万ドルの階層では軒並み経営戸数が減少しており、特に典型的な中規模経営階層である年間販売額10万ドル以上25万ドル未満の経営戸数は、前回調査から8.5%減少して14万9,049戸となった。

 センサスの公表に際して講演を行ったヴィルサック農務長官は、中規模経営の戸数の減少が続いていることを心配しているとした上で、有機農業、環境保全対策、エネルギー生産、地球温暖化対応などを通じて、政府全体の優先課題である中流階層への支援にUSDAとしても積極的に取り組んでいくと表明している。

肉用牛繁殖経営が最大の農業経営部門

 農業経営戸数を農業経営部門別に見ると、肉用牛繁殖経営(注2)が65万6,475戸と全体の29.8%を占めて最大となっており、その他作物・牧草経営が50万299戸(22.7%)、穀物・油糧種子経営が33万8,237戸(15.3%)でこれに続いている。肉用牛繁殖経営と穀物・油糧種子経営は前回調査時より経営戸数が減少しているが、特定作目への依存度が低いその他作物・牧草経営の経営戸数は増加している。

 肉用牛繁殖経営以外の畜産関係部門を見ると、肉用牛肥育経営(フィードロット)は3万1,065戸(1.4%)、養豚経営は3万546戸(1.4%)、酪農経営は5万7,318戸(2.6%)であり、いずれも経営戸数が減少している。一方、食鳥・鶏卵経営は6万4,570戸(2.9%)、綿ヤギ経営は6万7,254戸(3.1%)、その他畜産経営(水産養殖を含む)は24万5,675戸(11.1%)であり、これらについては経営戸数が増加している。

新規就農後5年未満の経営が全体の13.2%を占める

 約220万戸の農業経営のうち、2003年以降に新たに就農した経営は29万1,329万戸であり、全体の13.2%を占めている。これらの経営は、平均農地面積(201エーカー:約80ヘクタール)や年間販売額(7万1千ドル:703万円(1ドル=99円))が全経営平均の約半分程度しかなく、年間粗収入額(注3)が1万ドルに達しない経営の割合も73%に達している。このため、農業経営を主業とする割合は33%と低い(全経営平均は45%)が、一方で経営主の年齢が48歳と若いことも特徴である。なお、全経営平均の経営主年齢は57.1歳であり、2002年から1.8歳、1997年から3.1歳上昇している。

 米国の農業経営の95.9%に相当する211万3,615戸は家族経営であり、年間販売額が25万ドル未満の中小家族経営が192万5,799戸(全体の87.3%)を占める。このうち、最も多いのは農業以外の職業を主業とする中小家族経営(全体の36.4%)であり、退職者による中小家族経営(全体の20.7%)がこれに次いでいる。一方、年間販売額が25万ドルを超える大規模家族経営は18万7,816戸(全体の8.5%)しかないが、これらの経営の年間粗収入額は全経営の粗収入額(3,052億441万ドル:30兆2,152億円)の62.9%に相当する1,919億7,688万ドル(19兆57億円)に上り、経済面から米国農業を支える主体となっている。


(注1)平年における農畜産物の年間生産・販売額1,000ドル以上の経営
(注2)肉用牛の繁殖・育成を主とする農業経営で放牧経営や肥育経営を除く。
(注3)農畜産物販売額に政府補助金を加えた額



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