需給解説

加工乳・乳飲料等の生産実態調査の結果について

酪農乳業部

当機構では、加工乳・乳飲料等の生産実態を把握するために、「加工乳・乳飲料等の生産実態調査」を毎年度実施している。20年度は財団法人経済調査会に委託し、19年度の生産実態を調査した。

 今回は、20年度の調査結果(平成19年度生産実績)を紹介する。本調査は加工乳・乳飲料等を生産している全国146社を対象とし、「加工乳」「乳飲料」「はっ酵乳」「生クリーム等(「クリーム」及び「乳等を主要原料とする食品」をいう。)」の4品目について、アイテムごとの成分、生産量などに関し、郵送と電子媒体を併用して調査を行ったものである。

平成19年度の調査概況

 平成19年度の加工乳・乳飲料等の生産量は、大手3社では、前年度に引き続き加工乳の減少、乳飲料の増加となっている。農協プラント系では、加工乳、乳飲料ともに減少、中小系では、加工乳で増加、乳飲料が減少という結果であった。

 大手3社では、加工乳の全てのタイプで減少、乳飲料の全てのタイプで増加となっている。農協プラント系(以下、「農プラ系」という。)では、加工乳、乳飲料ともに減少しているが、加工乳の減少幅が大きい。中小系では、加工乳の濃厚タイプの増加と、乳飲料の白物タイプの減少が目立っている。 はっ酵乳の生産量は、プレーンタイプを除き減少しているが、ハードタイプの減少が特に目立っている。

 生クリーム等の生産量は、前年度に比べ、乳脂肪率18%以上の製品で増加、18%未満の製品で減少となっている。

 注:1)本調査で企業区分は次のとおりとする。大手3社は明治乳業、森永乳業、日本ミルクコミュニティをいう。
     農プラ系は、主に酪農生産団体が出資する乳業会社、中小系は大手3社・農プラ系を除くその他の乳業会社をいう。  
   2)乳飲料には大きく分けると牛乳をベースとして牛乳の栄養分や風味をそのままに、カルシウムや鉄、ビタミンやミネラルなどの
     栄養分を強化した白い乳飲料「白物乳飲料」と、コーヒーや果汁などの入った色のついているもの「色物乳飲料」がある。
     本調査では風味にかかわらず、白いものを白物乳飲料、色のついているものを色物乳飲料に区分している。

1.生産シェア

(1) 加工乳・乳飲料

 加工乳では、中小系が53.9%とシェアを大きく伸ばし、過半数を占めている。色物乳飲料と白物乳飲料では大手3社のシェアが高く、特に白物乳飲料では大きくシェアを伸ばしている(図1)。

図1 加工乳・乳飲料の生産シェア(平成19年度)

(2) はっ酵乳

 はっ酵乳注3全体の生産シェアは乳業系注4が83.9%で、前年度から0.7%低下している。「フローズン等」で乳業系が6.0%上昇しているが、もともとの数量が少ないためで、全ての種類で大きな変化は見られない(図2)。

図2 はっ酵乳の生産シェア(平成19年度)

(3) 生クリーム等

 生クリーム等全体では、乳業系が生産シェアを伸ばし、83.7%を占めている。乳脂肪18%以上の製品では、前年度と比べ大きな変化は見られないが、18%未満の製品では非乳業系の生産シェアが大きく低下し、乳業系と拮抗している(図3)。

図3 生クリーム等の生産シェア(平成19年度)

   注:3) はっ酵乳の区分は次のとおりとする。「ハード」は寒天やゼラチン等で固形化したもの、「ソフト」は果肉等を加えた流動性の
       あるもの、「プレーン」は牛乳・乳製品をはっ酵させたもの、「ドリンク」はプレーンヨーグルトを液状化したもの、「フローズン等」
       はフローズンヨーグルトや上記以外のもの。   
      4)本調査で、乳業系・非乳業系に区分する場合、乳業系は牛乳処理場を持っている会社、非乳業系は牛乳処理場を持って
       いない会社とする。

2.成分

(1) 加工乳

 「低脂肪」タイプは、乳脂肪率1.0%、無脂乳固形分率が10.0%の製品が最も多くなっている。「濃厚」タイプは、乳脂肪率4.0%〜4.5%、無脂乳固形分率8.8%〜9.0%に集中している。「その他」(「低脂肪」「濃厚」タイプ以外のもの)では乳脂肪率が3.3%に集中しており、無脂乳固形分率は8.5%の製品が最も多くなっている。なお、大手3社は「その他」の生産がなかった(図4)

図4 加工乳の成分(平成19年度)

(2) 乳飲料

 前年同様「色物乳飲料」より「白物乳飲料」の方が、乳脂肪率、無脂乳固形分率ともに高い傾向が見られる。「色物乳飲料」の乳脂肪率は平均で1.5%、「白物乳飲料」では1.8%、無脂乳固形分率は「色物乳飲料」が平均で4.9%に対し「白物乳飲料」は8.8%となっている。 企業区分別に加工乳との比較をすると、大手3社の「加工乳(平均)」の乳脂肪率は、「白物乳飲料」と比べて非常に高くなっているが、農プラ系では「加工乳(平均)」との大きな差は見られない(図5)。

図5 白物乳飲料と加工乳(平均)の成分(平成19年度)

3.乳脂肪率ごとの生産量

 (1)加工乳

 乳脂肪率ごとに生産量を見ると、前年度より若干低下したものの、「低脂肪」タイプの製品が全体の74.8%を占めている。企業区分別に見ると、前年度同様にシェアの高い、農プラ系、中小系では「低脂肪」タイプの製品が多く、大手3社では、「濃厚」タイプが多い傾向が続いているが、全体的には、大手3社、農プラ系では「低脂肪」、「濃厚」ともに減少、中小系では「濃厚」タイプが増加傾向を示している(図6)
図6 乳脂肪率ごとの生産量(加工乳)

 原材料使用割合の推移を見ると、今年度も生乳の使用割合の減少傾向が続いており、前年度から1.5ポイント低下し25.2%となっており、平成15年度からでは、8.6ポイントも低下している(図7)。 加工乳の生産量は、全体的に減少傾向にあり、「牛乳市場全体の落ち込み」や「乳飲料への移行」のため、今後も減少するとの見方が多い。

図7 原材料使用割合の推移

(2) 乳飲料

 乳飲料全体では、乳脂肪率0.5〜1.0%の製品が全体の42.9%を占め主力となっている。同区分の製品は「色物乳飲料」では、全体の55.7%を占めている。

 「白物乳飲料」では乳脂肪率0.5〜1.0%と1.0〜1.5%の生産量が拮抗しており、それぞれ22.8%、23.1%を占めている。 企業区分別にみると、「白物乳飲料」全体で、大手3社では、乳脂肪率1.5〜2.0%、農プラ系及び中小系では、乳脂肪率0.5〜1.0%の製品が主力となっている(図8)。

 「白物乳飲料」の原材料使用割合の推移を見ると、減少傾向を続けていた生乳の使用割合が増加に転じている(図9)。

 乳飲料の生産量は、大手3社、農プラ系、中小系で、「色物乳飲料」のコーヒータイプがそれぞれ83.2%、90.6%、74.7%と大半を占めている。

図8 乳脂肪率ごとの生産量(白物乳飲料)
図9 原材料使用割合の推移

(3)  はっ酵乳

 乳脂肪率ごとの生産量では、乳脂肪率3.0〜3.5%の製品が全体の34.3%と最も多く、特に乳業系だけでは39.9%を占めている。タイプ別に見ると「ドリンク」タイプの乳脂肪率は1.0%未満の製品が多く、「ソフト」タイプは2.0〜2.5%、「プレーン」タイプは3.0〜3.5%に集中している(図10)。

 はっ酵乳の生産量は、前年度比4.7%減少しているが、「ハード」タイプの減少が顕著であった。

図10 乳脂肪率ごとの生産量(はっ酵乳)

(4) 生クリーム等

 乳脂肪率ごとの生産量をみると、乳脂肪率18%以上では、42.0〜48.0%の割合が最も高く、50.1%と半数を占めている(図11)。

 乳脂肪率18%未満では、0%の製品が49.3%と、こちらも半数を占めている。

 生クリーム等の見通しについては、洋菓子向けに堅調に推移しており、アンケート結果では、「増加」と「横ばい」を合わせると80%を超えている。

図11 乳脂肪率ごとの生産量


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