2008年の豚肉域外輸出量は輸出補助金の追い風で過去最高を記録
欧州委員会の取りまとめた豚肉需給見通しによれば、2008年の豚肉域外輸出量(内臓等含む)は、2007年11月30日より2008年8月7日まで豚肉に係る輸出補助金注が措置されていたことが追い風となり、過去最高となる2551千トンを記録した(図1)。2007年の豚肉域外輸出量(1911千トン)は、同年1月1日のブルガリアおよびルーマニアのEU加盟により、それまで域外輸出とされていた実績が域内貿易扱いと変更となった関係で2006年(2089千トン)を下回ったが、2008年は、ロシア、中国およびウクライナ向け輸出の大幅増により、2006年をも上回る過去最高を記録する形となった。
注: 2008年8月8日以降、豚肉に係る輸出補助金はゼロに設定されている。
図1 EUの豚肉域外輸出量の推移(1〜12月)
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2009年の豚肉域外輸出はアフリカ向けを除き軒並み減少
これに対し、同見通しは2009年のEU域外への豚肉輸出量について、昨今の経済危機による消費の冷え込みを背景として、過去最高を記録した2008年を下回って推移すると見込んでいる。
2009年第一四半期の域外輸出実績は、前年同期比1%減とわずかな減少となっているものの、これは、豚肉・豚肉製品の輸出減少分(同6%減)を内臓・ラードの輸出増加分(同10%増)が補っているに過ぎず、昨年来の経済危機の影響により安価な製品へ需要がシフトしていることがうかがえる。また、輸出先別についても、アフリカ向け(同6%増)を除き、ヨーロッパ向け(ロシア、ウクライナなど:同7%減)、アジア向け(同2%減)、北米向け(同21%減)、オセアニア向け(同10%減)と軒並み前年同期を下回っており、世界規模で経済危機の影響が顕在化しているとみることができる。
2009年のデンマーク産豚肉の国外輸出量もロシア、日本向けなどで減少
イギリスの農業・園芸開発委員会(AHDB)によると、EUの主要な豚肉輸出国であるデンマークの2009年第一四半期における国外輸出量(EU域内向けを含む)もロシア、日本向けを中心に減少しており、ロシア向け輸出では経済危機による需要の冷え込みが、日本向け輸出では日本国内における冷凍豚肉の期末在庫増加および北米産冷蔵豚肉との競争の激化がそれぞれ影響していると説明されている。(表1)
表1 デンマークの豚肉輸出量の推移(1〜3月)
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しかし、国外輸出量は減少しているものの、ポーランドおよびドイツ向けの輸出は前年同期比を上回っている。特にポーランドについては、既報(畜産の情報「2009年7月号」)のとおり、2008年飼養頭数が前年比19.2%減と大幅に減少した影響で、同国における豚肉需要を満たすためには、デンマークを含む国外からの豚肉の輸入に頼らざるを得ない状況となっている。このように、経済危機が終息しない中でデンマーク産豚肉のポーランド向け輸出が増加しているのは、ポーランド国内における強い豚肉需要を示したものと考えられる。
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