耐乾性やコストに着目 パンパにおける農業生産活動を大まかに示すと、図のような地域区分となるが、近年大豆などの耕種作物の価格上昇が続く一方で、牛肉価格は伸び悩んだことから、これまで多くが放牧地として利用されてきた地域でも、耕種作物が生産されるようになっている。 特に繁殖めす牛用の放牧地として利用されてきた土地は、元来、生産性が低いことから、耕種作物の生産を行うためには、肥育牛用の放牧地からの転換に比べ、多くの肥料や土壌改良剤などの投入が必要となる。大豆などの価格上昇が続く中では、このような多投入型の生産も行われてきた。しかし、2008/09年度については、降雨不足によるトウモロコシや大豆の単収低下により、2009/10年度の生産に向けた資金が不足している。このため、2009/10年度は、これまでようにどのような土地でも、大豆を生産するという方法を続けることが難しくなるとみられる。 そのような中、耐乾性に優れ、トウモロコシや大豆に比べ、肥料や土壌改良剤などの投入を必要としないソルガム生産に注目する生産者もいる。
(北部移転地帯および西部移転地帯)に徐々に移動している。 今年度の降雨不足の中でもまずまずの成果 ブエノスアイレス州北部でソルガムを試験栽培するLagra社に収穫状況について聞いた。同社は、6千ヘクタールの自作地を持つ地元でも有数の大規模経営であり、大豆2千ヘクタール、トウモロコシ1千ヘクタール、ソルガム2.5百ヘクタール、残り約2.7千ヘクタールを放牧地として利用し、繁殖から肥育までの肉用牛一貫経営を行っている。また、生産した穀物の一部を利用して年間約1千トンの配合飼料を調製し、肥育牛の飼料とするとともに、地元の中小家畜経営や酪農経営にも販売している。 同社がソルガムを作付けた農地は、低湿地のため、これまで放牧地として利用されてきた。しかしながら、大豆価格の上昇から、このような土地でも収益が得られるかと試験的に昨年度、大豆の生産を行ったところ、1ヘクタール当たり1.3トンの単収しか得られず大きな赤字となった。 このため、将来的には大豆も見据えた土壌改良の目的も含め、今年度はソルガムの生産を行ったところ、1ヘクタール当たり5トンの収穫が得られた。今年度は降雨不足のため大豆もトウモロコシも少なくとも2割以上単収が低下している中では、ソルガムの収穫は期待した程度のものであったとみられる。 また、今回のソルガム生産は、試験栽培であることから、高タンニン型および低タンニン型のソルガムを同一ほ場には種し、鳥害の試験も行った(低タンニン型は鳥害を受けやすい)。ほ場の近くには、鳥が住む林も点在するが、低タンニン型に際立った被害は見られなかった。 このようにソルガム生産に関心が集まる中、アルゼンチントウモロコシ協会(MAIZAR)では、 (1) ソルガムは耐乾性に優れ、降雨不足に強いこと (2) 大豆は連作障害が発生する恐れがあること (3) 大豆は、その製品も含め、ほとんどが輸出されてしまうが、飼料や蒸留酒原料として利用されるソルガム生産は、国内産業の振興につながること などソルガムの生産の効用を訴えている。
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