平成25年までに輸出額を1兆円規模に拡大するという目標の下、官民挙げての総合的な輸出戦略が推進されています。こうした中、各地の畜産物輸出ブランドについて、随時、本稿で紹介していきます。
今月は、牛肉、豚肉について、シンガポール市場への輸出が認められた3処理施設のうち、先陣を切った鹿児島県のサンキョーミート株式会社(田中
知 取締役社長)の「和牛肉」輸出について紹介します。
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8年ぶりとなる再開に関係者の期待は膨らむ
シンガポール政府は、日本で平成13年9月に発生したBSEへの対策として、日本からの牛肉輸入を禁止していたが、本年5月14日、同国への輸出可能な処理施設として3カ所(サンキョーミート株式会社有明ミート工場、南九州畜産興業株式会社(ナンチク、冷凍豚肉も輸出可能)以上鹿児島県、株式会社群馬県食肉卸売市場)を認定した。
サンキョーミート株式会社は、平成18年から米国、同19年から香港、カナダに向け和牛肉を生産しており、これに新たにシンガポールが加わる格好となる。海外展開に慣れている同社ではあるが、積み上げてきたノウハウが、今回、シンガポールで生かされることに、田中取締役社長以下従業員の思いは熱い。なお、輸出手続きは、伊藤ハム株式会社を通じて行われる。
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5月27日、8年ぶりとなる「初荷」200キログラムが、先陣を切り有明ミート工場を出発
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高級部位の輸出は、国内の消費不振の中の「光明」
販売する品種、品目は、日系量販店の求めに応じ行われ、「初荷」となる6月5日から、A4〜A5等級の「都城和牛」が、「テンダーロイン・ステーキ」、「サーロイン・ステーキ」などにカットされ、店頭に並んだ。100グラム当たりの価格は、約2,300円(34.80ドル:1シンガポールドル67円換算)とされ、一般的なスーパーマーケットで販売される豪州産サーロイン・ステーキが約302円(4.50ドル)であることから、約8倍もの開きとなる。
今福取締役によると、シンガポール市場は、食料品の大半が海外から輸入されていることで、国民の食の安全性への「こだわり」は人一倍強く、また、一人当たりのGDPは、日本を抜きアジアでトップの地位であるとした上で、和牛肉の輸出は、単に価格だけを見れば高価に映るが、和牛肉そのものが持つ品質の違いに絶対の自信があることから、売上げの伸びには、大いに勝算が見込め、今後、豚肉輸出についても検討したいとしている。
特に、景気の低迷により、国内での牛肉消費不振の中、その中でも高級部位に荷余り感がある中、ロイン系、ヒレを中心とした部位の輸出は経営に「光明」を与えるものである。
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輸出品は高級部位が中心(写真は、サーロイン)
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輸出量の増加は、いかに中華系住民に受け入れられるか
田中取締役社長によると、消費ポテンシャルを十分に有するシンガポール市場であるが、販売戦略を考える上で、在留邦人を対象とする牛肉輸出量の増加には限界があると見ており、同国の人口の大半を占める中華系住民に、高額な金銭を支払うだけの品質価値を有している牛肉であることを地道に醸成し続けることが、輸出量のさらなる増加につながるとの考えであり、短期に答えを出すのではなく、長期的な視野に立ち、かつ、攻めの姿勢で臨みたいとしている。
協力:サンキョーミート株式会社 有明ミート工場
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