順調な鶏肉の生産調整
米国のブロイラー産業は、約1年半にわたって生産調整に取り組んできた。こうした取り組みを反映し、米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が公表した「Broiler
Hatchery」によると、米国の主要19州におけるブロイラー向けひなの週間導入羽数は、2008年4月第3週に前年同期を下回って以降、本年10月最終週までの81週間で平均4.0%前年同期を下回っている。直近の5週では前年を0.8〜2.8%下回る水準で推移しており減少幅は縮小傾向にある。
図7 ブロイラー向けひな週間導入羽数と前年比
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景気低迷の中、やや好転した鶏肉需要
生産調整により供給が絞り込まれていることなどから、昨年低迷した鶏肉(むね)の価格は、6月以降5カ月連続で前年同月を上回るなど改善の兆しが見られている。また、景気が低迷する中、消費者はより安価な商品へシフトする傾向があることから、食肉の中では比較的値頃感のある鶏肉の価格が景気低迷の影響を最も受けておらず、9月の卸売価格は牛肉(カットアウトバリュー)が前年同月を11.1%、豚肉(カットアウトバリュー)が27.8%下回っている中、鶏肉(むね)は4.8%上回っている。
図8 食肉の卸売価格の前年同月比の推移
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手羽需要の台頭
鶏肉の部位別需要を見ると、主要品目であるむね肉より安価な手羽に新たな需要が集まる傾向にある。この新たな手羽需要は、手羽の低価格に目を付けた飲食店が手羽料理をメニュー化し、それが質および価格ともに消費者ニーズに合致したことから起こったものと考えられる。
この結果、需要の高まった手羽の価格が上昇し、2008年11月には手羽がむね肉を上回る事態が発生した。手羽価格は、むね肉価格が回復した本年5月に下回ったものの、季節的変動によりむね肉価格が夏をピークに下落すると、手羽価格は再度むね肉価格を上回った。その後、むね肉価格が下落を続ける一方、手羽価格は上昇を続け、その差は10月には過去最大となる43.5セントに拡大した。なお、主に輸出に仕向けられるもも肉は、世界的な景気後退で輸出需要に陰りが見られる中、前年同月を大きく下回って推移している。 例年、手羽価格は2月のピークを経て3月以降には下落する傾向にあるが、今年も同様の傾向が見られるのか、それとも今般の手羽需要が定着し、好調な価格を維持するのか、鶏肉需要の構造変化が注目される。
図9 鶏肉の卸売価格の推移
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