経済危機による域外需要の縮小が域内市場に影響
欧州委員会は2009年10月、豚肉の需給見通しを発表したが、これによると、今後の豚枝肉卸売価格は、100キログラム当たり、2009年第4四半期は139.9ユーロ(約19,166円:1ユドロット業界には明るい兆しも見えるが、今後の見通しについては、不透明であることから、飼養動向に影響を与える要因として、世界の経済動向、金利動向、主要国通貨に対する豪ドル為替相場、ソルガムなど夏穀物の生産動向などに注視する必要があるとしている。ーロ=137円)、2010年第1四半期は135.02ユーロ(約18,498円)、2010年第2四半期は142.09ユーロ(約19,466円)といずれも前年同期を下回る水準で推移するとの予測となった。
2008年の豚肉市場は、同年春から夏まで輸出補助金が措置された一方で前年よりも生産量が減少したため堅調に推移したものの、 2007年後半からの飼料原料価格高騰が域内養豚生産者の経営を圧迫したことから、2009年の豚肉生産量は2008年よりさらに減少することとなった。これを受け、2009年の春先の時点では、2009年の豚肉市場は2008年には及ばないものの、それに準じる水準で推移すると予測されていたが、実際の豚肉市場は夏場のピークが十分高まらないうちに2009年8月から早くも下落に転ずることとなった。欧州委員会の分析によれば、このピークが低くなった理由として、2008年秋から顕在化した経済危機や為替レートの下落による韓国、ロシアなどの域外輸出需要の縮小に加え、南欧で定着していた夏場の保養先での滞在という生活スタイルが従来ほど重視されなくなってきたこと(バーベキュー需要の縮小)などが影響しているとみられる。
図5 EUにおける豚枝肉卸売価格の推移
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このように現在の域内の豚肉需給は、前年同期と比較すると緩んでいる状況にあるものの、飼料原料価格の低下と堅調な子豚市場により域内の養豚生産者は一定の収益が確保できているとみられ、2009年春時点の飼養頭数は、EU27全体で1億3980万頭と前年同期の1億4130万頭から微減(▲1.1%)にとどまっている状況にある。なお、繁殖母豚の飼養頭数もEU27全体では同様に微減(▲1.0%)となっているものの、ドイツ、デンマークおよびオランダでは増加に転じていることは注目される。
図6 EU27における豚飼養頭数の推移
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