需給動向 海外

◆米 国◆

生産を削減し価格低迷からの出口を模索する米国のブロイラー産業


◇絵でみる需給動向◇


ブロイラー向けひな羽数はさらに減少

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が公表した「Broiler Hatchery」によると、米国の主要19州におけるブロイラー向け週間ふ卵個数は2008年3月下旬以降一貫して前年を下回っている。これを受け、ブロイラー向けひなの週間導入羽数も4月中旬以降ほぼ一貫して前年を下回って推移している。

 これは、2008年前半のトウモロコシをはじめとする飼料原料価格の高騰や、燃料費高騰のコスト高を受け、需給環境の改善に向けて大手ブロイラー企業がブロイラーの生産削減に取り組んできたためである。

 ブロイラー向け週間ふ卵個数およびひなの週間導入羽数の減少傾向は、10月以降顕著に表れ、直近5週(10/26〜11/29)では、ふ卵個数が前年同期に比べて8.6%減少し、ひなの導入羽数も、前年同期に比べて7.8%の減少となっている。(図1)

図1 ブロイラー向けひなの導入羽数

豚と畜頭数の推移(EU)


ブロイラー生産量は減少局面に

 ブロイラー向けひなの導入羽数の減少は、9月のブロイラー処理羽数に表れている。USDA/NASSが公表した「Poultry Slaughter」によると、9月のブロイラー処理羽数は7億5,381万羽と前年同期を6.3%上回るが、操業日1日当たりでは前年同月を3.2%下回った。同様に10月の日数を調整して比較すると2カ月連続で前年同月を下回り4.2%減となっている。

 四半期ごとののブロイラー生産量(連邦検査ベース)は、2008年第1〜3四半期までは、前年同期を上回って推移し、累計で4.2%増となったが、米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)によると、2008年第4四半期の生産量は90億ポンド(408万トン)と前年同期比で1.9%減少すると予測している。(図2)

図2 四半期別ブロイラー生産量

 生産者は、価格低迷に対処するため生産量の削減に取り組んでいるが、景気後退の影響もあって、まだその効果が表れない。生産の減少局面は2009年に入っても当面は続くものと思われる。

 ブロイラーの在庫量は、需要が伸びない中、生産量が前年をほぼ上回って推移してきたことから、2008年は一貫して前年を上回って推移している。10月について部位別に見ると、手羽肉のみ前年同月を下回っているが、国内消費の主力部位であるむね肉の在庫は前年同月を3割近く上回っている。(図3)

図3 ブロイラー在庫量


ピルグリム・プライド社の苦難

 2007年には国内生産量の23.7%のシェアを占めていた米国最大手のブロイラー生産企業ピルグリム・プライド社が、12月1日に連邦破産法第11条の適用による民事再生手続の開始を申請した。

 飼料原料価格の高騰から、生産量を削減し、収益性の改善に取り組んできたが、景気の減速も相まって価格が上がらず厳しい経営状況に立たされてきた。同社の株は、1年前には30ドル前後で取り引きされていたが、経営の悪化とともに下落し、2008年9月には6ドル台に、申請の前には1ドル近くにまで落ち込んでいた。

 破産法第11条の適用は、負債を弁済して会社を解散する第7条の適用と異なり、裁判所の監察の下で経営を続けることができる。同社のクリント・リバース社長は、破産法第11条の下で、従来どおりの業務を行いながら企業を再建するとし、顧客、従業員およびビジネスパートナーへの対応に変化はないと表明している。

 鶏肉部門が厳しい採算状況にあることは他のブロイラー生産企業も同じではあるが、ピルグリム・プライド社の場合は、鶏肉専門の企業であること、2年前に業界第3位であったゴールド・キスト社を買収した際の負債が大きいこともさることながら、関係者の間では、2008年前半に急騰した飼料原料価格が、それ以降も高騰を続けると見込んで先物取引にヘッジしたところ、予想に反して価格が下落し、多大な損失を生むというヘッジングの失敗が今回の原因と言われている。
 業界最大手の企業のことだけに業界に与える影響は大きく、今後の同社の動きが注目される。


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