需給動向 海外

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バターの域内価格は介入価格を下回る水準に低下


◇絵でみる需給動向◇


2008年11月のバターの域内価格は前年同月比47%安も

 既報(「畜産の情報2008年12月号」)のとおり、バターの域内価格が昨年の秋以降低迷しており、2008年11月の価格は、前年同月比47%安の100キログラム当たり214ユーロ(26,750円:1ユーロ=125円)と大幅に下落し、2008年10月以降、介入価格同246.39ユーロ(30,799円)を2007年2月以来1年7カ月ぶりに下回る事態となった。

 この状況に対応するため、欧州委員会は11月29日付けの官報において、2009年3月1日から開始される予定であった民間在庫補助を2カ月前倒しし、2009年1月1日から開始することを発表した。これは、現在の危機的状況に対処するための機動的な措置として11月13日の運営委員会を経て決定・公表されたもので、バターの域内価格を押し上げる効果をもたらすことが期待されている。

 なお、民間在庫補助の詳細は以下のとおりとなっている。

  • 保管開始期間:2009年1月1日から8月15日まで
  • 放出開始時期:2009年8月16日から
  • 補助単価(トン当たり):
    (1)固定経費 15.62ユーロ(1,953円)
    (2)保管経費 1日につき0.44ユーロ(55円)
  • 補助対象期間:放出日まで
    (最長の場合でも2010年の民間在庫補助開始の前日(2010年2月末日)まで)
  • 従前は補助対象とはならなかった既に倉庫に保管されている製品についても、製造から28日以内であれば当局への申請日の翌日から補助対象となる。

バターの域内価格および介入在庫量の推移


脱脂粉乳価格も低下傾向が続く

 また、脱脂粉乳についてもバターと同様に価格が低迷しており、2008年11月の100キログラム当たりの域内価格は、前年同月比45%安の178ユーロ(22,250円)と低下傾向が続いている。これは、昨年の価格高騰時に配合飼料中のたんぱく原料が脱脂粉乳からほかの原料への代替が進み、配合飼料用原料としての需要が縮小してしまったことが一つの要因とみられる。このため、すぐには域内の需要回復が見込めない状況にある。

脱脂粉乳の域内価格の推移

乳業関係団体は更なる追加措置を期待

 バターの民間在庫補助の2カ月前倒しが決定されたとはいえ、依然としてEUの乳製品をめぐる需給情勢には厳しいものがある。民間在庫補助の前倒し実施により、一定程度供給量を調整することが可能となるものの、2009年3月1日より民間在庫補助と併せて実施されることとなる介入買入は、限度数量が3万トンとされており、価格支持の効果は限定的とみられるためである。

 このような状況を受け、乳業関係団体は、

  • 現在ゼロとされているバターおよび脱脂粉乳の輸出補助金の再開
  • 飼料用、ベーカリー用などの需要拡大のための補助の導入
  • バターの介入買入限度数量3万トンの拡大

という現時点で考え得るすべての選択肢について引き続き欧州委員会側に要請を行っている。


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