需給動向 海外

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2008年の豚肉生産は減少基調となるも輸出は新興国向けを中心に増加


◇絵でみる需給動向◇


豚肉生産量前年比約40万トン減の見通し

 欧州委員会によれば、2008年の豚肉生産量は前年を約40万トン下回る見通しとなっている。

 この傾向は四半期ごとのと畜頭数の推移を見ても明らかで、EU全体では2008年の第2四半期より既に前年同期を下回っており、主要な対日輸出国であるデンマークでも第4四半期には前年同期を下回ると推計されている。

 欧州委員会は、現時点で短期的な予測が可能な2009年上期までは少なくともと畜頭数が前年同期を下回る傾向が続くとみている。

 この直接の理由としては、主要生産国で顕著となっている繁殖母豚の減少が挙げられる。EUの豚肉生産の上位6カ国であるドイツ、スペイン、フランス、ポーランド、デンマークおよびオランダにおいては、軒並み繁殖母豚の飼養頭数が大きく減少している模様で、2008年の春時点では、最も減少が著しいポーランドでは約20%、そのほかの国々でも5〜10%減少したとされている。昨年来の飼料原料価格の高騰や海上運賃(フレート)の上昇による域内の養豚経営環境悪化が、繁殖母豚の減少を引き起こしたものの、2008年夏以降は、飼料原料価格、フレートとも低下基調に転じたため、経営環境は改善しつつある。しかし、域内の豚枝肉卸売価格も2008年11月時点では145ユーロ/100キログラム(18,125円:1ユーロ=125円)程度まで低下しているところであり、今後の域内の豚肉生産動向は予断を許さない状況となっている。

 いずれにしても、繁殖母豚の増頭とそれによると畜頭数の増加が目に見える形で現れるまでには一定のタイムラグが避けられないため、当面は域内の豚肉生産は前年同期を下回る状況が続くとみられる。

EUにおける豚肉生産量および豚枝肉卸売価格の推移

豚と畜頭数の推移(EU)

豚と畜頭数の推移(デンマーク)


豚肉輸出はロシア、中国およびウクライナ向けを中心に大きく増加

 既報(「畜産の情報2008年12月号」)のとおり、2008年1〜9月の豚肉輸出は、8月まで措置された輸出補助金の効果もあり、輸出数量、輸出金額ともに前年同期を大きく上回った。中でも増加が著しいのは、ロシア、中国およびウクライナ向けで、これら3カ国の増加量は全体の増加量(約60万トン)の9割に相当している。

 一方、わが国への輸出は量・額ともに微増となっているが、輸出額のシェアではロシアに次ぐ位置を占めている。これは、ロシア、中国およびウクライナには比較的安価な部位が輸出の中心となっていることによるものであり、これらの新興国向けの豚肉輸出が増加してもわが国がEUの豚肉輸出における重要なパートナーであるという位置づけには変わりがないことがうかがえる。

EUの豚肉輸出量の推移(1〜9月)

EUの豚肉輸出額の推移(1〜9月)


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