話題

新年のごあいさつ

独立行政法人 農畜産業振興機構 理事長
木下 寛之

 明けましておめでとうございます。

 当機構は、農畜産業およびその関連産業の健全な発展および国民消費生活の安定に寄与するため、農畜産物の需給・価格安定業務等を実施するとともに、国内外の農畜産物の生産、流通、消費、農業政策などに関する多様な情報を幅広く提供しております。

 旧年中の皆様方のご協力に感謝申し上げますとともに本年も引き続きよろしくお願い申し上げます。

 さて、昨年は、食品の安全性に関わる事件、食料の国際価格動向等が大きく取り上げられる年となりました。

  食品の安全性をめぐっては、中国製冷凍ギョーザ事件に始まり、事故米、メラミンの混入、水質汚染などが注目を集め、従来にも増して、食の安全に対する消費者の関心が高まり、政府、生産者、企業による取組みが進められました。

 穀物、大豆等の国際価格は、2006年秋頃から上昇基調で推移し、様々な要因により、多くの品目が2008年中に史上最高値をつけました。その後、米国発の金融不安による商品市場からの資金流出、穀物需要の減退懸念に加え、小麦の豊作予想なども加わり、穀物等の国際価格は大幅に下落したものの、いまだ、長期的なトレンドで見ればかなりの水準となっています。

 原油や穀物等の国際価格高騰により、肥飼料等の価格が上昇し、農畜産物の生産コストが急激に上昇したため、生産者の収益性が悪化しました。また、小麦関連製品、大豆加工品をはじめとする食料品価格は上昇しています。これは日本だけの傾向ではなく、米国を含む主要国の食料の消費者物価指数も、2006年以降大幅に上昇しています。

 消費者物価が上昇する一方で、世界経済が減速し、株式・為替の大幅変動等もあり、日本の景気はさらに厳しいものとなることが予想されています。

 このような食料・農業を取り巻く厳しい情勢を踏まえますと、2009年については、昨年以上に、消費者の食料支出に向けた消費行動は、安全性や品質にこだわりつつも、厳しいものとなることが予想され、生産者にとっての生産環境も楽観を許さないものと考えられます。

 一方、国際関係では、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)をはじめとする新興国の影響力の拡大が認識される中、世界貿易機関(WTO)のドーハ開発ラウンド(多角的貿易交渉)は未だモダリティーの合意までには至っていません。一方、経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)に関しては、7月にインドネシアおよびブルネイとの間で、また、12月にはASEAN、フィリピンとの間で発効し、豪州との交渉も続けられております。また、米国では6月に新たな農業法が成立しており、今後、オバマ政権の下で、農業政策がどのように進められるか注視する必要があります。

 このような情勢の中、畜産関係について見ると、昨年は、世界的な飼料穀物価格の高騰に伴う配合飼料価格の上昇を受け、畜産経営の収益性が大きく低下するなど、まさに「平成の畜産危機」ともいえる極めて厳しい状況でありました。このような厳しい情勢を踏まえ、農林水産省は7月、畜産物行政価格(加工原料乳生産者補給金単価、指定食肉(牛肉および豚肉)の安定価格および指定肉用子牛の保証基準価格)について、制度発足以来初めての期中改定を決定し、すべての行政価格を引き上げるという措置を講じました。

 機構といたしましては、農林水産省からの要請を受け、畜産業振興事業について、年度当初から配合飼料の上昇に対応して措置したほか、7月には行政価格の期中改定を受けた追加緊急対策、11月には、牛肉の消費低迷などに伴う肉用子牛価格や牛枝肉価格の低迷を踏まえた緊急の畜産経営安定対策をそれぞれ実施するなど、畜産をめぐる情勢に対応した機動的かつ柔軟な事業執行に努めました。また、畜産業振興事業の実施に当たっては、事業実施主体公募制を導入し、事業実施主体選定に係る透明性を確保するほか、事業の効率的・効果的な実施を図りました。

 一方、当機構は、乳製品の国家貿易機関として、カレントアクセス輸入を前倒しして行うとともに、バターの追加輸入を実施するなど、内外の需給動向に即した的確な事業の実施に努めました。

 さらに、情報収集提供業務については、配合飼料価格に影響を及ぼす主要国の穀物生産状況などの畜産物の需給動向や国内におけるエコフィードの取り組みなどの先進事例について、海外駐在員事務所などを通じて情報を収集・整理し、情報誌やホームページを通じて適時的確に提供してまいりました。

 このような厳しい情勢の中にあって、当機構が業務を円滑に進めることができましたのは、ひとえに皆様方のご理解とご支援のたまものと感謝申し上げます。本年も、食料・農業を取り巻く情勢が激変する中にあって、業務の一層の効率化、透明性のさらなる確保に努めつつ、農畜産業および関連産業の健全な発展と国民消費生活の安定に資するよう、国民の視点に立った業務運営を図るべく、役職員一丸となって取り組んでまいる所存であります。

 当機構が所管する各品目に関する専門性を重視しつつも、耕畜連携に代表される横断的視点、組織としての統合力の発揮にも留意したいと考えます。

 本年が皆様にとって希望のもてる明るい年でありますことをご祈念申し上げ、新年のごあいさつといたします。


 

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