需給動向 海外

◆米 国◆

新型インフルエンザの影響で需要回復は遅れる見込み


◇絵でみる需給動向◇


2009年の豚肉生産量 は9年ぶりに前年を下回る予測

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2009年1〜4月の豚肉生産量は前年同期比3.8%減の350万9千トンとなった。これは、1頭当たり枝肉重量は、飼料価格の低下を受けて前年をやや上回る同0.4%増となっているものの、と畜頭数が同4.2%減の3,792万頭と減少していることによる。1頭当たり枝肉重量については、トウモロコシ先物価格(シカゴ相場、期近価格)が、2009年1〜4月に前年同期比30.9%減と前年水準を大幅に下回っていることを受け、2009年4月は、前年同月比1.0%増の92.5キログラムとなっている。しかし、と畜頭数については減少傾向にあり、その背景には次のような要因が挙げられている。(1)2008年の飼料価格の高騰などから収益性が悪化し、その改善に向けて生産者が生産削減に取り組んでいる最中であること、(2)カナダからの生体豚の輸入が飼養頭数の減少、米国の原産地表示の義務化の実施などから減少していること。

 こうしたことから、同省経済調査局(USDA/ERS)では、2009年の豚肉生産量は前年比2.6%減の1,031万3千トンと、9年ぶりに前年を下回ると予測している。

低迷する豚肉卸売価格

 一方、同省農業市場流通サービス局(USDA/AMS)によると、2009年5月の豚肉卸売価格(カットアウトバリュー)は、前年同月比25.6%安の100ポンド当たり59.1ドルと前年水準を大きく下回った。

 豚肉卸売価格は、生産者の生産調整の取り組みの効果が期待され上昇が見込まれていたが、新型インフルエンザ(A/H1N1)の影響により4月末から5月初旬にかけて急落した。その後豚インフルエンザから新型インフルエンザ(A/H1N1)に名称を変更するなどの対応が奏功し、5月中旬には下落前の水準まで戻った。例年、夏に向けて価格は上昇に転じるところだが、これまでの価格低迷により生産者が出荷を先送りする行動をとったことなどから需給は緩和基調にあり、価格は例年と比べ大幅に下落している。

 また、2009年1〜3月の豚肉輸出量は、前年同期比6.6%減(468万7千トン)となった中にあってメキシコ向けは、同59.6%増(97万7千トン)と大幅に増加し、米国産豚肉の輸出先シェアを拡大した。しかし、メキシコでの新型インフルエンザ発生により経済が停滞しており、その勢いは弱まらざるを得ないとみられる。さらに、中国、ロシアをはじめ多くの国が新型インフルエンザを機に米国、または米国の一部の州の豚肉の輸入を禁止している。このように、景気後退を反映して低迷する需要の減退に、新型インフルエンザの発生に伴う輸入禁止が追い打ちをかける事態となったことから、USDA/ERSは豚肉卸売価格の回復は新型インフルエンザ発生前の見込みよりも時間がかかると見ている。

豚肉卸売価格(カットアウトバリュー)の推移

 


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