需給動向 海外

◆米 国◆

上級牛肉の格付け割合の増加と低級牛肉との価格差の縮小


◇絵でみる需給動向◇


増加するチョイス級牛肉の格付割合

 米国の牛肉の格付けは、「肉質等級」による格付と「歩留まり等級」による格付のいずれか、または両方を選択して実施されている。2008年においては、米国の全と畜頭数の97.9%が連邦政府による枝肉検査を受けており、そのうち80.0%が去勢牛および未経産牛(以下「若齢肥育牛」という。)となっている。その若齢肥育牛については連邦検査枝肉の92.2%が「肉質等級」による格付を受けている。

 「肉質等級」は枝肉の肉質と脂肪交雑の組み合わせにより上位から(1)プライム級、(2)チョイス級、(3)セレクト級、(4)スタンダード級など計8つの等級に分類されるが上位3等級で若齢肥育牛に格付けされる枝肉の9割以上を占めている。

 米国農務省農業市場流通サービス局(USDA/AMS)によると、若齢肥育牛のチョイス級に格付される割合は図1のとおりとなる。これを見ると今年に入ってからチョイス級の格付割合は6割を超えておりその割合が高くなっていることが分かる。2月の第4週には1997年に現行の格付システムになってから最高となる63.2%を記録している。

 この要因として次の2点が挙げられる。

 (1)今年の冬は暖冬であったことから脂肪交雑が入りやすかったこと。
 (2)昨年秋以降、トウモロコシ価格が下がったことから肥育期間が延ばされたこと。

 ほかに、枝肉格付の機械化によりチョイス級の格付割合が高くなったとも言われているが、これはむしろ実質的な肉質の低下を招いていると言えるかもしれない。

図1 チョイス級格付け割合の推移

接近するチョイス級牛肉とセレクト級牛肉の価格

 若齢肥育牛のチョイス級とセレクト級のカットアウトバリュー(※)の価格差は、2007年においては1ポンド当たり5ドルから13ドルであった。しかし、最近になってこの価格差がほとんどない状況が起きており、USDA/AMSの公表している週報によると両者の価格が逆転している日もある。(図2、3)

 これは、チョイス級の肉質の低下とセレクト級の肉質の向上を意味するというよりむしろ、格付の機械化により格付の判断が甘くなったことや、消費者の低価格志向などによりチョイス級の需給が緩み、セレクト級の需給がタイトになったことを理由とするのが適当と考えられる。

 つまり、チョイス級の格付割合の増加はチョイス級の牛肉の生産量の増加を意味し、それは供給増による価格下落要因となる。一方、セレクト級の格付割合の低下は供給減となることから価格の上昇要因となると考えられる。

 同省経済調査局(USDA/ERS)によると、チョイス級とセレクト級のカットアウトバリューの価格差の縮小もしくは逆転は、景気の後退により消費者がレストランでチョイス級など良質の牛肉を食する代わりに小売店での牛肉の購入を増やしているためと説明している。

   ※)カットアウトバリューとは、各部分肉の卸売価格などを1頭分の枝肉に再構成した卸売指標価格

図2 プライム級、チョイス級、セレクト級のカットアウトバリュー価格の推移
図3 チョイス級とセレクト級の価格差の推移

 


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