海外トピックス


2008/09年度の農家経営見通しを公表(豪州)


農家経営は、2006/07年度の大干ばつに よる経営悪化から回復基調へ

 豪州農業資源経済局(ABARE)は4月7日、最近の農業経営の動向を探る農家調査「ファームサーベイ」を公表した。今回の調査では、2006/07年度から2008/09年度における農家の経営状況および見通しを報告している。

 この調査では、経営類型ごとに農家を抽出して経営状況を分析しており、その対象は大きく分けて(1)穀物・畜産経営(穀物専業:小麦主体、穀物・家畜複合、肉牛専業、羊専業、羊・肉牛複合の5つに細分類)、(2)酪農経営の2部門で構成されている。

 2006/07年度の同国の農家経営は、100年に一度といわれる干ばつによる影響で著しく悪化したが、2007/08年度は回復基調に転じ、特に、酪農経営の現金収入は、過去20年間で最も高い水準が見込まれている。

 2008/09年度については、穀物生産量の増加、家畜取引価格の上昇、飼料価格の下落、支払利息の減少などを背景として、前年度をさらに上回る回復が見込まれている。全部門平均の1農家当たりの現金収入について、2008/09年度は前年度比28%増の80,000豪ドル(584万円:1豪ドル=73円)と見込まれている。

 しかし、農家経営に回復が見込まれるのは、主に、西オーストラリア州、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ(NSW)州北部に限られ、ビクトリア(VIC)州、NSW州南部などを含む同国の南部地域では、乾燥気候やかんがい用水の不足などにより、農家経営は依然として厳しいとしている。
農家1戸当たりの経営状況(全部門平均)
  
   注1:期間は年度(7月〜6月) 
     2:07/08年度は見込み値、08/09年度は暫定値
     3:農家収益は、現金収入に在庫増減額を加算し、減価償却費と家族労働費を減算したもの


2008/09年度の1農家当たりの現金収入、前年度比で肉牛専業は増加、酪農は減少の見込み


 2008/09年度の農家収益を経営類型別に見ると、穀物・畜産経営では、穀物専業が15,000豪ドル(110万円)、穀物・家畜複合が12,000豪ドル(88万円)、羊・肉牛複合が2,000豪ドル(15万円)の黒字と見込まれる一方、肉牛専業が27,000豪ドル(197万円)、羊専業が27,000豪ドル(197万円)の赤字と見込まれる。また、酪農経営は、5,000豪ドル(37万円)の黒字と見込まれている。

 この中で、豪州で最も農地利用面積が大きく、広範囲に分布する肉牛専業の経営動向については、肉牛価格上昇などによる現金売上の増加が素牛価格の上昇などによる生産コストの増加を上回ると見込まれることから、1農家当たりの現金収入は、前年度を24%上回るとしている。ABAREでは、2008年後半から2009年初めにかけて北部地域でまとまった降雨があり、牧草の生育条件が改善したため、と畜頭数が減少し、肉牛価格は前年度より回復するとみている。

 なお、肉牛経営の農家収益を飼養頭数規模別に見ると、300頭以上のいわゆる大規模農家については、1農家当たり43,000豪ドル(314万円)の黒字が見込まれる一方、300頭未満の農家は69,000豪ドル(504万円)の赤字と、経営規模によって開きが大きい。

 一方、酪農経営における1農家当たりの現金収入を見ると、2007/08年度は、飼料費、肥料費などで生産コストは上昇するが、国際乳製品価格の高騰に伴う乳価の大幅な上昇により、前年度に比べ3倍近い増加が見込まれている。2008/09年度は、飼料費、支払利息などの生産コストの減少が見込まれるが、乳価の下落に伴う現金売上の減少などにより、前年度比33%減と見込まれている。ABAREでは、2008/09年度の酪農経営は、黒字が見込まれるものの、同国の主要酪農地帯であるVIC州北部やNSW州南部のかんがい地域では、引き続き、かんがい用水の利用が制限されていることから、農家経営を圧迫する購入飼料への依存度は依然として高いとみている。

農家1戸当たりの経営状況(肉牛専業、酪農)
  
   注1:期間は年度(7月〜6月) 
     2:07/08年度は見込み値、08/09年度は暫定値
     3:農家収益は、現金収入に在庫増減額を加算し、減価償却費と家族労働費を減算したもの


元のページに戻る