低迷する域内市場を受け判断
既報(2009年2月号)のとおり、2007年に高騰した国際乳製品価格は、2008年に入り徐々に値を下げ、今秋に入り急落したが、EU域内価格も同様に急落している。ドイツ市場価格情報センター(ZMP)による2009年1月のEU域内の乳製品価格は、バター(オランダ・ブランドバター)が100キログラム当たり207.00ユーロ(約24,200円:1ユーロ=117円)となり前年同月比27%安、脱脂粉乳(ドイツ・飼料用)が同141.30ユーロ(約16,500円)となり、同33%安と大幅な落ち込みとなった。
欧州委員会は2007年6月15日以降ゼロとしている乳製品の輸出補助金について必要に応じ再開を検討するとの姿勢を示していたが、このような価格動向を踏まえ、2009年1月22日に開催された乳業管理委員会を経て23日より以下の輸出補助金が適用されることとなった。EUは、WTOドーハラウンド交渉において2013年に輸出補助金を撤廃することを対外的に約束しており、今回の措置はそれに逆行すると国際的に非難されることは必至な情勢であったが、ある乳業関係者によると輸出補助金再開と同様に当地乳業団体より要望されている介入買入の限度数量(バター:3万トン、脱脂粉乳:10万9千トン)の拡大よりも輸出補助金の再開の方が財政負担が軽いということも影響した模様である。
バターの域内価格及び輸出補助金の推移
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脱脂粉乳の域内価格および輸出補助起因の推移
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輸出補助金の影響は現時点では限定的との見方も
しかしながら、域内の別の乳業関係者は、1月23日より適用された輸出補助金の水準では、EU域内価格よりさらに安価とされる国際価格との差を補うには不十分で、輸出補助金が増額されない限り影響は限定的とみている。現時点においては、限度数量が設定されているとはいえ、2009年3月1日より開始されるバターおよび脱脂粉乳の介入買入の活用が乳業にとっては相対的に有利となっている模様である。
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