海外トピックス


厳しい経営環境の中、生乳生産量が減少の恐れ(アルゼンチン)


乳製品の国際価格の急落に連動して生産者乳価も下落

 2007年後半から2008年夏頃にかけて乳製品の国際価格は高騰した。この要因として、乳製品の主要輸出国である豪州やニュージーランド(NZ)での干ばつの影響による国際市場への乳製品供給量の減少や産油国などでの乳製品需要の増加などが挙げられる。こうした乳製品の国際価格の高騰を受け、アルゼンチンの乳製品輸出価格は上昇した。しかし、昨年夏以降は、豪州やNZにおける乳製品生産の回復や、世界的な景気の後退による乳製品の需要減退からの国際価格は急落し、アルゼンチンの乳製品輸出価格も下落した。(図1、2)

 また、これに連動して生産者乳価も下落している。(図3)

図1 全粉乳の輸出量と輸出単価の推移

図2 チーズの輸出量と輸出単価の推移
図3 生産者乳価の推移

生乳生産量が減少するおそれ

 近年、アルゼンチンの生乳生産量は増加傾向にあるが、現地農業誌margenes agropecuarioが毎月試算している酪農経営モデルの1ヘクタール当たりの収益を見ると、一般的な経営形態である放牧主体型では赤字と試算されており、現在の乳価では、多くの酪農経営は厳しい状況であることが分かる。

 一方、同誌によると、現在の大豆作経営モデルの1ヘクタール当たりの収益は155ドルであることから、例えば、放牧主体型の酪農経営が同程度の収益を得るためには、生産者乳価を1リットル当たり0.255米ドル(現在0.207米ドル)まで引き上げる必要があると試算される。

 このような状況から生産者団体は、「現状の生産者乳価では、アルゼンチンは乳製品輸入国に後退する。このため1リットル当たり1ペソ(0.28米ドル)の支払いを求める。」ことを乳業メーカー側に対して要求しているが、

 (1) 輸出価格が低下していること

 (2) 政府と生産者団体の合意(http://lin.alic.go.jp/alic/week/2009/ar/ar20090316.htm)を
  踏まえて、乳製品輸出に係る輸出税を廃止したが、その税率は5%であったため、輸
  出コストの削減効果は限定的であること

から乳業メーカー側は、生産者団体が求めるような大幅引き上げに応じられないとみられる。

 しかしながら、このような状況が続く場合、酪農経営においても肉用牛経営と同様、草地面積を減らして、大豆作面積を増やすことが予想され、生乳生産量が減少傾向に転じる恐れがある。


酪農経営1ヘクタール当たりの収益の試算



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