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FAO、2050年に向けた食料をめぐる情勢について公表
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国連食糧農業機関(FAO)によるプレス発表によると、11月16日〜19日にローマで開催される「世界食料安全保障サミット」に向けた土台づくりとなる「高級専門家フォーラム」が同地で10月中旬に開催される。FAOでは、このフォーラムにおいて「2050年に向けた食料をめぐる情勢について」の議論を深める目的から、今回のプレス発表で事前にフォーラムでの検討資料を公表した。なお、フォーラムには、先進国、途上国の学識経験者、NGOおよび民間企業などから300名程度の専門家の参加が見込まれている。
FAO、慎重ながら「楽観的」 FAOのハフェズ・ガネム副局長によると、2050年に向けた食料をめぐる情勢については、慎重ながら「楽観的」との見方をしているが、世界全体の食料の確保に対しては、たゆまぬ努力を続ける必要があり、立ちはだかる幾つかの課題を解決することにより為し得ると指摘している。 人口:2050年、世界の人口は現在を約3割上回る91億人 FAOによると、飢餓と貧困、減少する天然資源の効率的な利用、気候変動が2050年までに農業が取り組むべき課題であるとし、食料増産の必要性を強調している。 生産:穀物は現在の21億トンから30億トンにまた、FAOは、食料需要の増加は、人口の増加と所得の伸びによるとした上で、2050年には食肉生産量は2億トン以上増加し4億7千万トンに達し、穀物(小麦、コメ、粗粒穀物)需要量は、約30億トンが見込まれ、現在の生産量21億トンを4割以上増やさなければならないとしている。するとしている。なお、バイオ燃料向けの生産は、原油価格と政府の政策によるが、農産物の需要を増加させることになるとしている。 単収、農地:生産増を担うのは耕作地の拡大ではなく単収の伸び 農産物生産量の増加の9割は、耕作地面積の拡大によるものではなく、単収の伸びと集約農業によりもたらされるものとされるが、途上国、特にサハラ以南のアフリカ諸国、ラテンアメリカ諸国などの耕作地については、新たに1億2千万ヘクタール程度拡大する必要がある一方で、先進国では、バイオ燃料需要による変更があるかもしれないが、5千万ヘクタール程度が減少するとしている。 気候変動:気温の上昇は単収の減少に気候変動による農作物生産への影響は、少なくとも2050年までは大きくないとの見方であるが、単収は気温が2度以上上昇すると農産物に深刻な影響が発生し、トウモロコシなどの主要穀物の単収は減少するとしている。特にアフリカ、アジア、ラテンアメリカなどの低緯度地域では、気温の上昇により、単収は20〜40%減少することもあり得るとしている。このため、農産物の生産量は、気温の上昇により減少することが指摘されている。なお、世界全体の温室効果ガス排出量の14%程度は、農業から排出されているとしている。 水:より少ない量での生産増がカギ農業用水の需要は、利用効率などが改善されるが、それでも2050年までに11%程度の伸びが見込まれている。世界全体の水資源は十分としているが、地域的にバラつきが見られ、特に中近東/北アフリカ、南アジアなどでは懸念され、より少ない水量で多くの食料を生産することが、水不足の解決のカギになるとしている。また、気候変動が降雨量パターンに影響を与えることで、水不足は深刻さを増す可能性があるとしている。 農業技術:広範囲にわたり新たな技術の導入を原油、窒素、リンなどの天然資源の価格が需要拡大により上昇する中で、気候変動、水不足に対応するため、新たな農業技術を広範囲に導入し、農業慣例を改善することなど、生産性を高めることの重要性を指摘している。 農業投資:現在の5割増が必要 また、FAOは、多くの飢餓と貧困に立ち向かうために、研究開発への公共投資を増加させ、新たな農業技術、品種を導入するなどの揺るぎない対応を呼び掛けている。社会の基盤となる農業への投資は、最優先課題として扱われるべき事項であり、農村部の生計を支援するための農業投資は、現在の5割程度の増加が必要であるとしている。 |
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