需給動向 海外

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バター・脱脂粉乳とも卸売価格が回復基調で推移


◇絵でみる需給動向◇


バターの卸売価格は前年同月を大幅に上回る水準まで回復

 域内のバター卸売価格は、2009年夏以降上昇が顕著となり、10月第2週時点では、100キログラム当たり290ユーロ(約38,570円:1ユーロ=133円)と前年同月を大幅に上回る水準まで回復した(図1)。これは介入買入単価の1.3倍を超える水準であり、バターの介入買い入れは9月前半の入札を最後に応札がゼロの状態となっている。

図1 バター卸売価格の推移

 当地報道によれば、このように域内のバター需要が高まっているのは、08年下期以降の域内の生乳価格低迷を受け、酪農家が購入飼料(配合飼料)の給与を控えたことにより、乳脂肪の供給が当初の予測を下回って推移していることによるものと説明されている。図2は、近年のEUにおける配合飼料生産量の推移を示したものであるが、域内の乳製品市場が悪化した08年は前年と比較し、「酪農・肉用牛」向けの配合飼料生産量が顕著に減少していることが読み取れる。生乳価格の下落は09年に入ってさらに深刻化していることから、09年のデータではこの傾向が更に強まっていると考えられ、これが乳脂肪の生産に影響していると考えられる。なお、「養豚」も「酪農・肉用牛」と同様に08年に配合飼料生産量が減少しているが、これはEU27の豚総飼養頭数が07年から08年にかけて4.2%減少したことが大きく影響していると考えられる。
図2 EU における配合飼料生産量の推移

脱脂粉乳卸売価格の回復の程度は緩やか

 一方、脱脂粉乳卸売価格の回復の程度はバターと比較すると緩やかなものとなっている。2009年10月時点では、100キログラム当たり180ユーロ(約23,940円)と介入買入単価を10%程度上回る水準まで回復したものの、前年同月には及ばない状態となっている(図3)。当地生産者団体は、脱脂粉乳市場の更なる改善のため、脱脂粉乳を飼料として処分する際の補助制度の復活や輸出補助金の増額を繰り返し主張しているが、これまでのところ欧州委員会側は、域内乳製品市場は回復に向かいつつあるとして、慎重な姿勢を崩していない。実際、9月下旬にベルリンで開催されたIDF(国際酪農連盟)ワールドディリィサミットの席上でも、脱脂粉乳を飼料として処分する際の補助制度の復活について場内から質問があったが、欧州委員会の乳製品課長であるRasmussen氏は、当該制度の効果は限定的としてその復活に否定的な見解を示した。また、同氏は、本年3月以降累積したバターおよび脱脂粉乳の介入買入在庫についても、放出により市場を混乱させ、さらなる介入買い入れを引き起こすような事態は回避する必要があるとして、域内市場価格の低下を引き起こすようなペースで在庫を放出することはないと説明している。このため当面は、介入買入在庫の放出により乳製品需給が緩む状況とはならないとみられる。

図3 脱脂粉乳卸売価格の推移

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