需給動向 海外

◆米 国◆

景気低迷の影響を受けて縮小傾向に拍車がかかる牛肉生産


◇絵でみる需給動向◇


1973年以降で最少の飼養頭数を記録

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が7月24日に公表した牛の飼養動向調査結果によると、2009年7月1日現在における牛の総飼養頭数は、前年を1.5%(150万頭)下回る1億180万頭となった。これは同調査においてデータが確認できる1973年以降最小値となる飼養頭数である。

 米国のキャトルサイクルは、飼料コストの増加や干ばつの影響などにより2007年を境に減少傾向で推移してきたところである。そのような中、昨年後半からの景気低迷の影響を受けて、牛枝肉価格、肥育素牛価格が弱含みで推移していることから、肉用牛繁殖農家の生産意欲の減退に拍車がかかっているものと推測される。

 なお、肉牛の主要な繁殖地域であるテキサス州中南部において記録的な干ばつが発生しており、今後の同地域における肉牛繁殖・育成経営に与える影響が懸念されている。

牛飼養頭数の推移(各年7月1日現在)
部門別飼養頭数の推移(各年7月1日現在)

 2009年7月1日現在の飼養頭数を部門別に見ると、乳用後継牛、種雄牛以外はすべて前年を下回っている。また、子牛生産頭数(乳用種含む)が前年を1.4%(約51万頭)下回る3560万頭となっており、今後2年間の牛肉生産がタイトになる可能性が高いことを示唆している。

牛肉部分肉価格と肥育素牛価格の推移

フィードロットの導入頭数が大きく減少

 同局が同日公表したフィードロット(収容能力1,000頭以上規模)の牛飼養動向調査結果によると、6月はフィードロットへの導入頭数が前年同月を8.4%(約13万頭)下回る139万1千頭となる一方、出荷頭数は前年同月を0.6%(約1万頭)上回る198万9千頭となった。その結果、2009年7月1日現在のフィードロット飼養頭数は、前年を5.3%(約54万頭)下回る975万2千頭となった。なお、6月のフィードロットへの導入頭数が大きく減少した要因としては、肥育素牛の供給が減少傾向にあることに加え、飼料コストの増加や枝肉価格の低下などから、肥育経営者の導入意欲が低下していることが考えられる。

年末に向けた牛肉供給は減少傾向か、価格上昇の鍵を握るのは需要

 同局の公表数値によると、5月のフィードロットへの導入頭数も前年同月を13.8%下回っており、5、6月の2カ月間でフィードロットへの導入頭数は前年同期と比べ38万9千頭の減少となっている。このことは、本年9月後半から11月にかけて牛肉供給が減少する可能性を示しているが、業界関係者の中には、枝肉価格が弱含んでいるため出荷が先送りされる傾向にあり、その滞留分が9月以降にずれ込めば大幅な生産量の落ち込みはない、との分析を示す者もいる。

 年末に向けた生産量が減少傾向で推移するようなことになれば、牛枝肉価格にとって上昇要因となると考えられる。しかし、本年に入って牛肉生産量(商業ベース)が前年を下回って推移しているにもかかわらず、枝肉価格が依然として低迷していることから、業界関係者の間では、景気低迷による牛肉需要の落ち込みが深刻であり、需要が回復しないことには枝肉価格の回復は期待できないという認識で一致している。
 


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