主な乳業メーカーが2009/10年度の初期生産者乳価を提示
豪州の生産者乳価は、各乳業メーカーが生乳を供給する酪農家に対して提示しており、生乳や牛乳乳製品の需給に応じて、期中に価格(当該年度の最終生産者価格の見込み)の見直しが随時行われる。主要酪農地域である南部の主な乳業メーカーは7月初め、2009/10年度(2009年7月〜2010年6月)の初期生産者乳価の提示を行った。これを見ると、国際乳製品価格の下落を反映し、1リットル当たり26.0〜34.5豪セント(21〜28円:1豪ドル=81円)と、各社とも前年度に比べ軒並み下落となった。通常、当該年度の初期生産者乳価は、6月末までに発表されるが、今年度は、国際乳製品価格の下落を背景とした先行きの不透明感から、発表が遅れていた。
なお、デイリー・オーストラリア(DA)は、6月に発表した酪農の現状および見通しに関する報告書の中で、2009/10年度おける南部地域の初期生産者乳価について、前年度を大幅に下回る1リットル当たり24
〜29豪セント(19〜23円)と予測していた。
2008/09年度の酪農経営は、乳価の下落により一転して赤字へ
豪州農業資源経済局(ABARE)が6月に発表した農産物需給予測によると、同国の生産者乳価については、2007/08年度は記録的な高値となったが、2008/09年度は前年度比20%安、2009/10年度は同18%安と見込まれている。また、その後発表されたABAREによる酪農の経営状況によると、2008/09年度における酪農経営は、乳価上昇により大幅な黒字となった2007/08年度から一転して、赤字に転じると見込まれている。
2008/09年度の酪農経営状況について見ると、売上から支出を控除した農家収入は、酪農家1戸当たり平均74,000豪ドル(599万円)と前年度に比べ47%減と見込まれ、また、そこから労働費などを控除した農家収益は、平均6,000豪ドル(49万円)の赤字と推計されている。農家収益を地域別に見ると、クイーンズランド(QLD)州など国内仕向け割合の高い地域では、比較的高い乳価が保証されたことから、黒字と見込まれるが、ビクトリア(VIC)州やニューサウスウェールズ(NSW)州南部といった輸出仕向け割合の高い地域では、赤字が見込まれている。特に、有数の酪農地域であるVIC州北部およびNSW州南部リベリナ地域では、43,900豪ドル(356万円)と大幅な赤字が見込まれている。2009/10年度については、さらに乳価の引き下げが見込まれることから、同地域において、生産コストを削減できない酪農家にとっては厳しい状況が続くものとみられ、離農の増加などが懸念されている。
2008/09年度の生乳生産量はわずかに増加したが、VIC州北部では減少
一方、DAによると、2008/09年度の生乳生産量は、前年度比1.8%増の938万8千キロリットルと前年度をわずかに上回った。これを州別に見ると、QLD州が5.5%増、南オーストラリア(SA)州が3.6%増とそれぞれやや増加、西オーストラリア(WA)州が6.7%増、タスマニア(TAS)州が7.1%増とそれぞれかなり増加した。これに対し、生乳生産量の6割以上を占めるVIC州は0.5%増、同約1割を占めるNSW州は1.5%増とそれぞれわずかな増加にとどまった。さらに、VIC州を地域別に見ると、東部地域が2.9%増、西部地域が3.1%増とそれぞれ増加したのに対し、北部地域は4.5%減と減少した。全国の生乳生産量の約2割を占めるVIC州北部地域は、マレー川沿岸などでかんがい用水を利用した放牧酪農が中心となっているが、同地域では冬季や春季の降雨量が3年連続で平年を下回ったことから、かんがい用水の貯水レベルが低く、利用が制限されていることにより減産したとみられる。
DAでは、酪農家は、2007/08年度においては、乳価が記録的な高値となったことから、飼料穀物や粗飼料を外部から購入することで生産を維持することができたとみている。しかし、2009年に入り、同国の酪農家の約4分の3が乳価の大幅な引き下げに見舞われたことから飼料コストが経営を圧迫しており、2009/10年度の酪農経営については、自給飼料の確保が極めて重要な課題であるとしている。
州別生乳生産量の推移(7〜6月)
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