09年4月時点のEUの生乳価格は、過去10年間で最低水準に低下
欧州委員会は、6月に開催された農相理事会の要請に応える形で、域内の乳製品市場を分析した報告書を作成し、7月22日付で公表した。この中で、近年の乳製品市場は以下のように説明されている。
07年のEUの生乳価格は、生乳の国際価格相当額(バターおよび脱脂粉乳の相場平均より算出)がEUの生乳支持価格を上回ったことを受け大幅に上昇したが、08年下期より、オセアニア、南米などの主要生産国における生産過剰と経済危機を背景とした地球規模の需要減退により、生乳の国際価格相当額が再びEUの生乳支持価格(バターおよび脱脂粉乳の支持価格より算出)を下回る水準まで下落したことから、EUの生乳価格もこれに連動する形で急落し、09年4月時点では、過去10年間で最低水準となる生乳1トン当たり247ユーロ(約33,592円:1ユーロ=136円)となった。
図1は、この動きをグラフ化したものであるが、EUの生乳価格が、生乳の国際価格相当額にほぼ連動する形で変動していること、および、03年以降漸減しているにせよEUの生乳支持価格に下支えされているため、これを下回らないで推移していることの2点が読み取れる。
図1 EUの生乳価格の動向
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乳製品の小売価格は08年春のピーク時から微減
図2は、生産者乳価、乳製品の工場出荷価格および小売価格の動向を示したものであるが、生産者乳価および各種乳製品の工場出荷価格が07年末をピークに大きく減少している一方、乳製品の小売価格は、08年春のピークからはわずかに減少しているにすぎないことが読み取れる。実際、直近の乳製品の工場出荷価格は、07年末からバターで39%減、脱脂粉乳で49%減、チーズで18%減、市乳で31%減となる一方、乳製品の小売価格は2%減と依然として価格高騰前の114%の水準を維持している。
このように、生産者乳価および乳製品の工場出荷価格が低下しているにもかかわらず、乳製品の小売価格が高止まりしているのは、EUの乳製品供給チェーンが効率的に機能していないことの表れと欧州委員会は見ており、同チェーンの効率をさらに向上させることが、競争力を高め、生産者乳価の低下を緩和し、小売価格への適切な反映を実現するために不可欠ではないかと分析している。
図2 生産者乳価、乳製品の工場出荷価格および小売価格の動向
(2000年1月時点の価格を100とした場合の指数)
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域内の乳製品市場は中長期的には好転と予測
欧州委員会は、上記の現状分析と併せ今後の乳製品市場の見通しも示している。短期的には、域内外の乳製品市場とも、十分な回復は見られないであろうと見込んでおり、09年3月から実施されているバターおよび脱脂粉乳の介入買い入れの在庫は09年から10年にかけてさらに積み上がると予測している。言い換えれば、介入買い入れによる市場介入が必要な時期が少なくとも10年までは続く可能性が高いということであろう。これは、7月13日に欧州委員会より提案された介入買入期間の延長が、次期の通常の介入買入期間に切れ目なくつながるよう10年2月末までとされていることとも合致する。
また、中長期的には、世界経済の回復に伴う高付加価値の乳製品を中心とした需要の増大により、域内の乳製品市場は好転すると見込んでいるが、その具体的な時期については言及されていない。
いずれにせよ、介入買い入れが開始された09年3月から7月までの累計で、バターで8万トン余、脱脂粉乳で25万トン余となった介入買入在庫が、域内市場回復の懸念材料となることは間違いない。
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