需給動向 海外

◆米 国◆

米国、ロシアと鶏肉輸出再開に合意、今後の輸出増に期待


◇絵でみる需給動向◇


ロシアの衛生条件に係る規制により鶏肉輸出は減少

 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、2010年1〜4月の鶏肉輸出量(ブロイラー、その他鶏肉、七面鳥)は前年同期比13.0%減の110万5千トン、輸出金額も同4.7%減の12億5900万ドル(約1121億円:1ドル=89円)と、それぞれ減少した。これは、輸出の約8割のシェアを占めるブロイラーの輸出量および輸出金額が、それぞれ前年同期比11.8%減、10.8%減とかなり落ち込んでいることが主な要因である。

 2010年1〜4月におけるブロイラー輸出の国別動向を見ると、メキシコ向けは低価格志向などにより輸出量、輸出金額とも前年同期比18.2%、4.0%の増加となった一方、昨年まで輸出量の約24%のシェアを占めていたロシア向け輸出量、輸出金額は同83.6%、86.1%の減少となった。これは、ロシアが本年1月より処理時に塩素系洗浄水を使用したブロイラーの受け入れを禁止していることが原因であり、同規制が米国のブロイラー輸出全体の減少に大きな影響を与えることとなった。

表1 ブロイラー国別輸出量および金額の推移
(単位:千トン、百万ドル)
資料:USDA/FAS
表2 鶏足(もみじ)国別輸出量および金額の推移
(単位:千トン、百万ドル)
資料:USDA/FAS
 

 また、本年2月より米国鶏肉製品に対してアンチダンピング関税を課すなどの措置を講じている中国向けについても、輸出量および輸出金額はそれぞれ前年同期比82.5%、79.5%の減となった。しかし、その一方で、香港向けは、輸出量および輸出金額がそれぞれ前年同期比202.4%、280.8%増加しており、高関税措置の輸出への影響は緩和されている。さらに、輸出量の約8割が中国に仕向けられている鶏足(もみじ)についても、高関税措置の影響により、2010年1〜4月の同国向け輸出量および輸出金額はいずれも前年同期比82.8%、71.0%の減少となっているが、その一方で、香港、ベトナム向けが著しく伸びており、全体の輸出金額では前年同期を上回る状況にさえある。

骨付きもも肉の在庫増加を踏まえ、USDAが買い上げを決定

 ロシア向けの骨付きもも肉(レッグクォーター)の輸出は年間67万トンに達することから、同国の輸出規制により同部位の在庫が増加傾向にある。USDA全国農業統計局(USDA/NASS)の「Cold Storage」によると、2010年5月末時点の骨付きもも肉の在庫量は前月比37.1%増、前年同月比89.4%増の6万トンに達しており、卸売価格(北東部)も前年同月を25.3%下回る37.8セント/ポンドと低迷している。在庫削減を図るため、USDAは6月15日、骨付きもも肉など鶏肉のダークミート(注1)を食料援助事業の中で1400万ドル(約12億5千万円)分買い上げることを決定した。公表に当たってヴィルサック農務長官は、「今回の買い上げが、在庫増加と卸売価格の低迷に苦しむ鶏肉生産者の助けになることを期待している」と、今回の対策が生産者支援であることに言及している。

注1:鶏もも肉など色合いが濃い肉をさす

米ロ首脳会談において輸出再開が決定

 米国政府の鶏肉買い上げは一時的な在庫削減につながるが、鶏肉生産が増加傾向にある中、根本的な需給改善を図るためにはロシアの輸出規制の解除が喫緊の課題となっていた。本件については1月以降、米・ロ政府の2カ国間で断続的に協議が行われていたが、6月24日のオバマ米大統領とメドヴェージェフ露大統領の首脳会談において、輸出再開の合意に至ったところである。合意内容は、ロシア側が塩素系洗浄水の使用禁止を継続する一方で、塩素系洗浄水以外の代替措置を認めるものとなっている。合意された代替措置は食肉パッカーにおいて適用可能であることから、関係者は今回の合意に至る政府の対応を高く評価している。

 しかし、塩素系洗浄水の使用禁止はこれまで通り継続されるため、在庫として積み上がっている骨付きもも肉などは、ロシア以外への輸出や国内での消費を期待するしかなく、また、新たな代替措置への対応や各種手続きなどを考慮すると、同国への輸出再開に実際には合意から2カ月程度を要することが見込まれている。今回の輸出再開合意は今後の輸出増を期待させる明るいニュースではあるが、需給を早急に改善させるものではないことから、骨付きもも肉の在庫状況や卸売価格などについては、依然として今後の動向が注目されるところである。

 



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