需給動向 海外 |
今後10年間、生産増は見込まれているが価格は下がらず |
値下がりは見込めない今後10年間の農産物価格経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)が6月15日に公表したOECD-FAO合同年次農業観測(Agricultural Outlook 2010-2019)によると、農産物価格は、2年前の記録的な価格高騰からは下落しつつも、今後、過去10年間の平均価格水準にまで戻ることは見込めないとの見方を示しており、この背景として、特に、生産増加のためにエネルギー投入を集中的に行うことによる高コスト構造の増加にあるとしている。 報告書によると、小麦と粗粒穀物のインフレ調整した今後10年間(2010年〜2019年)における実質価格は、これまでの10年間(1997年〜2006年)を15%〜40%上回るとの見方で、特に、植物油の実質価格は40%以上の値上がりを指摘している。(表5)
農産物増産への速度は緩やかだが、世界全体の生産量は確実に増加本報告書によると、世界全体における今後10年間の農業生産増加率は、過去10年間の生産増加率を下回る水準であるが、2050年の世界人口に見合った食料を確保するため、昨年見通した生産量の70%増に向け順調に進んでいるとの見方を示している。 農産物生産の増加は、OECD加盟国以外の開発途上国などに負うところが大きいとしているが、ブラジルが飛び抜けて大きく、2019年の生産量は2007年〜2009年の平均を40%以上上回るとし、また、ロシア、ウクライナは、政府による政策支援により、それぞれ26%、29%上回り、中国、インドは、それぞれ26%、21%上回るとしている。 先進国の生産量については、豪州は17%上回り、米国とカナダでは、10〜15%上回るとしているが、EU-27カ国は4%を下回るとの見方である。 なお、北アフリカと中東地域では、主として、水資源の制約から、また、サウジアラビアでは、政府が小麦生産への支援を縮小したことで、生産量は減少するとしている。 今後とも継続した拡大が見込まれるバイオ燃料生産バイオ燃料生産は、各国政府が行政目標数量を定めるなど、国策への依存が高いことに加え、原油価格の動きや第二世代に向けたエタノール、バイオディーゼルの技術開発などから予測することは難しいとしつつも、2019年は、2007年〜2009年の平均と比べ、エタノールは約2倍の158,849百万リットル、バイオディーゼルは約3倍の41,171百万リットルまで拡大するとしている。 エタノール生産に向けられる粗粒穀物は、2007年〜2009年は生産量の9%であったが、2019年は13%に、また、サトウキビについては、35%に達するとしている。一方、バイオディーゼルについては、植物油生産量の9%であったが、2019年は16%に拡大するとしており、需給に与えるバイオ燃料生産の影響の大きさを指摘している。 米国でのバイオエタノール向け主原料のトウモロコシは、2015年以降、政策上使用義務量を拡大しない計画であることから、その後2019年に向けての需要量は抑えられるとしている。 第二世代バイオ燃料生産は、2010年〜2019年の予測期間の後半から行われ、エタノール、バイオディーゼルは、それぞれ、全生産量の7%と6.5%が見込まれている。また、バイオディーゼル原料として植物油がほぼ90%用いられているが、2019年までには約75%に減少させる必要があるとし、そのために、植物油以外の利用拡大が指摘されている(表6)
およそ10億人が栄養不良下にあるという現実OECD加盟国における食料品価格は、2007年〜2008年における原料価格の高騰後に急激に値を下げたことでインフレ懸念を低下させたが、開発途上国、経済成長著しい新興国では、食料品価格の「下げ渋り」が、経済成長を妨げる大きな要因として挙げられている。このため、これらの国では、家計に占める食料品支出がかなりの割合を占めていることから、食料品が高値で維持され続けること自体が、食料安全保障の弱体化につながると指摘している。 また、世界全体で見ると、世界人口を養うのに十分となる食料生産は見込まれているものの、最近における価格急騰と経済危機は、飢えと食料不安の原因の一つになっており、現在では、およそ10億人の人々が、栄養不良下にあるとしている。このため、機能的でルールに基づいた貿易体制が公平な競争を行う上で極めて重要であり、食料品が十分に満たされている地域から不足した地域に向けての移転が確保されるまでの間、農業における生産量と生産性を引き上げる努力が必要であると指摘している。 |
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