社団法人 日本養豚協会/調査情報部 |
当調査は、社団法人日本養豚協会による平成21年度の養豚基礎調査(有効回答数3,881農場)結果をもとに、(1)後継者を含めた経営関連調査などの定型設問調査に加え、近年大きな話題となっている(2)衛生対策関連調査および飼料関連調査(リサイクル飼料(ここではエコフィードと言う。)、飼料用米)を中心に概要を紹介する。 1 豚肉をめぐる情勢
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表1 豚の飼養動向 |
資料:農林水産省「畜産統計」、「家畜の飼養動向」 注1:各年の飼養農家戸数、飼養頭数は、2月1日現在。 2:17 年は世界農業センサスの調査年であるために比較できるデータがない。 |
1)経営形態を全国・地域別に見ると、全国では個人経営の割合が60.1%と最も高く、次いで有限会社が23.9%と高かった。地域別では個人経営の割合が高いのは東海と近畿で、低いのは北陸、中・四国、九州・沖縄であった(表2)。
表2 地域別経営形態 |
2)後継者(回答農場数3,738)に関しては「決まっている」が25.0%で候補者の平均年齢は33.0歳、「対象者はいるが、現在は決まっていない」が19.3%で候補者の平均年齢は25.8歳、「後継者はいない・考えていない」が37.0%であった(表3・図1)。
表3 後継者について |
図1 後継者について |
3)農場責任者年齢階層別経営の今後の意向について、「現状維持」の割合が高いのは「50〜59歳」で74.2%、「経営を拡大する」の割合が最も高いのは「29歳以下」で50.0%であり、年齢が上がるほどその割合は減少し、「70歳以上」では7.0%であった。一方、「経営を縮小する」の割合が最も高いのは「70歳以上」37.9%であり、その割合は年齢が下がるほど減少し、「29歳以下」で3.1%であった(表4・図2)。
表4 経営の今後の意向と農場責任者年齢階層別 |
図2 経営の今後の意向と農場責任者年齢階層別 |
4)「廃業したい」「廃業する計画がある」と回答した255農場の理由を見ると、「生産資材(飼料等)の高騰で儲からないから」が38.4%と高く、次いで「後継者がいないため」が35.3%と続き、この二つの理由で7割以上を占めていることが分かった(表5)。
表5 「廃業したい」、「廃業する計画がある」理由について |
農林水産省によると、20年度の国内生産量は、堅調な卸売価格や衛生対策の効果による事故率低減等から、前年度比1.1%増となった。21年度は、子取用めす豚頭数の増加や衛生対策の効果から、前年度比4.6%増となったと分析している。
現場での衛生対策はどのようなものなのか、調査結果は以下の通りとなった。
(1)衛生全般について
1)農場における人の入退場管理(経営形態別、複数回答、回答農場数3,669)
「対策をしている」割合が高いのは農協直営とその他が100%、次いで農事組合法人98.1%である。「何も対策をしていない」割合が高いのは個人経営14.9%であった(表6)。
表6 農場における人の入退場(経営形態別、複数回答、割合(%)、回答農場数3,669)について |
2)豚導入時の対応の有無(経営形態別、回答農場数3,138)
外部から生体を導入し、隔離検疫を要する3,138農場のうち、「隔離検疫を実施している」割合が最も高いのは農協直営で70.4%、「隔離検疫を実施していない」割合が高いのは契約農場・預託農場で76.2%となった(表7)。
表7 豚の導入時の対応の有無(経営形態別、割合(%)、回答農場数3,138)について |
3)農場内への資材の搬入時の対策(経営形態別、回答農場数3,510)
「対策をしている」割合が高いのは株式会社68.4%、次いで農協直営67.5%であった。「特別な対策をしていない」割合が高いのは個人経営70.8%、次いで契約農場・預託農場65.7%であった(表8)。
表8 農場内への資材の搬入時の対策(経営形態別、割合(%)、回答農場数3,510)について |
4)野生動物の侵入防止策(経営形態別、複数回答、回答農場数3,647)
「対策をしている」割合が高いのは株式会社90.1%、次いで農協直営89.7%であった。「特別な対策をしていない」割合が高いのは個人経営28.6%、次いで契約農場・預託農場26.0%となった(表9)。
表9 野生動物の侵入防止策(経営形態別、複数回答、回答農場数3,647) |
(2)事故率について
1)事故率の平均(経営形態別、回答農場数2,845)
「子豚舎・子豚豚房」の経営タイプ別事故率では、一貫経営が7.1%、繁殖経営が6.2%と一貫経営が高かった。一方、「肥育舎・肥育豚房」では、一貫経営4.2%、肥育経営4.0%と一貫経営が高かった(図3)。
図3 事故率の平均(経営形態別、回答農場数 2,845)について |
内訳:ア 子豚舎・子豚豚房2,582 農場、イ 肥育者・ 肥育豚房2,398 農場、ウ アおよびイ期間通算 2,845 農場 |
なお、繁殖経営の「肥育舎・肥育豚房」の事故率、肥育経営の「子豚舎・子豚豚房」の事故率、肥育経営の「子豚舎・子豚豚房」の事故率については、繁殖経営であっても出荷までに肥育舎・肥育豚房で飼育する期間や、肥育経営であっても子豚導入により一時子豚舎・子豚豚房で飼育する期間もあり、この期間の事故率が記入されたものとして集計している。
2)事故率改善への対策(複数回答・地域別、回答農場数3,511)
事故率改善への取り組みに関して、「対策をした」のは80.0%で何らかの対策を実施している。実施した対策で効果があったもの(複数回答)では、「衛生対策」が88.6%と最も高く、次いで「生産環境の改善」が22.5%と高い割合を示し、「生産方式の変更」は4.6%と低かった(表10・図4)。
表10 事故率改善への対策(複数回答・地域別、回答農場数3,511)について |
図4 事故率改善への対策(全国) |
3)衛生対策の内容(複数回答・地域別、回答農場数2,464)
衛生対策の内容では、「ワクチネーションプログラムの見直し、変更」が69.7%と最も高かった。20年に承認されたサーコウイルスワクチン効果も、事故率を低下させた大きな要因と思われる。次いで「豚舎消毒の徹底」51.0%が高い割合を示し、「農場HACCP」2.9%、「施設のゾーニング」2.8%は低かった。地域別に見ると、「ワクチネーションプログラムの見直し、変更」の割合が高いのは関東77.9%、低いのは近畿59.5%であった。また、「豚舎消毒の徹底」の割合が高かったのは九州・沖縄59.8%で、低いのは関東40.9%であった(表11)。
表11 衛生対策の内容(複数回答・地域別、回答農場数2,464)について |
(1)エコフィードについて
1)現在使用している飼料(複数回答、地域別、回答農場数3,752)
近年注目を集めているエコフィードの使用状況について、使用割合の年次別推移は平成15年10.0%、17年17.3%、18年13.9%、19年15.4%、20年19.3%、21年16.0%と増加傾向で推移してきた。地域別に見ると、食品産業が盛んな近畿が55.0%で最も割合が高く、次いで東海26.9%、中・四国22.6%、北陸17.6%となっている(図5)。
図5 現在使用している飼料 |
2)エコフィードを利用している農場の今後の意向(地域別、回答農場数568)
エコフィードの使用を「このまま継続したい」が67.4%でもっとも高く、次いで「拡大したい」が29.0%「減らしたい」「中止したい」は合わせて3.5%であった。地域別では北陸と東海で継続・拡大したい意向が高かった(図6)。
図6 エコフィードを利用している農場の今後の意向 |
3)エコフィードを利用していない農場の今後の意向(地域別、回答農場数2,007)
「新たに使用を始めたい」割合が高い地域は近畿で34.8%と、エコフィードの入手のしやすさなどが影響していると考えられるが、一方、「これからも使うつもりはない」としているのは、北海道・東北で割合が高かった(図7)。
図7 エコフィードを利用していない農場の今後の意向 |
(2)飼料用米について
1)飼料用米作付状況
飼料用米の作付面積の推移は図8の通り、21年産は前年比260%増と、急速に増加している。
図8 飼料用米作付面積(全国)の推移 |
資料:農林水産省生産局畜産部畜産振興課調べ |
2)飼料用米の今後の利用意向と拡大量
飼料用米使用の今後の意向について、現在使用中の98農場のうち「このまま継続したい」が68農場、「拡大したい」が25農場、合わせて93農場が今後も使用するとしている(表12)。
表12 飼料用米の今後の利用意向と拡大量(回答農場数2,494) |
これらの意向から、飼料用米の今後の使用量を算出すると、継続使用量は約6,261トン、拡大量は1,133トンと見込まれる(中止予定量は10トン)。
一方、現在使用していない2,398農場のうち、450農場が「使用を始めたい」としており、回答のあった農場の18.8%を占め、新規使用予定量は36,789トンとみられる。
継続と新規を合わせた飼料用米の需要量は、44,173トンと見込まれることがわかった。
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