需給解説

養豚基礎調査全国集計結果の概要

社団法人 日本養豚協会/調査情報部

 当調査は、社団法人日本養豚協会による平成21年度の養豚基礎調査(有効回答数3,881農場)結果をもとに、(1)後継者を含めた経営関連調査などの定型設問調査に加え、近年大きな話題となっている(2)衛生対策関連調査および飼料関連調査(リサイクル飼料(ここではエコフィードと言う。)、飼料用米)を中心に概要を紹介する。

1 豚肉をめぐる情勢

 農林水産省「畜産統計」他によると、21年度は、前年度前半までの枝肉卸売価格が堅調に推移していたことや衛生対策の効果等から総飼養頭数は9899千頭、前年比1.6%増加となった。特に子取用めす豚については、同2.9%増となった。一方、飼養戸数は6890戸と、飼養者の高齢化や配合飼料価格の高騰による廃業があったため、前年に比べて340戸(同4.7%)減少した。飼養頭数は着実に増加しているが飼養戸数は減少しており、大規模化が進んでいることがわかる(表1)。

表1 豚の飼養動向
資料:農林水産省「畜産統計」、「家畜の飼養動向」
注1:各年の飼養農家戸数、飼養頭数は、2月1日現在。
  2:17 年は世界農業センサスの調査年であるために比較できるデータがない。


2 経営関連調査結果

1)経営形態を全国・地域別に見ると、全国では個人経営の割合が60.1%と最も高く、次いで有限会社が23.9%と高かった。地域別では個人経営の割合が高いのは東海と近畿で、低いのは北陸、中・四国、九州・沖縄であった(表2)。

表2 地域別経営形態

2)後継者(回答農場数3,738)に関しては「決まっている」が25.0%で候補者の平均年齢は33.0歳、「対象者はいるが、現在は決まっていない」が19.3%で候補者の平均年齢は25.8歳、「後継者はいない・考えていない」が37.0%であった(表3・図1)。

表3 後継者について
図1 後継者について

3)農場責任者年齢階層別経営の今後の意向について、「現状維持」の割合が高いのは「50〜59歳」で74.2%、「経営を拡大する」の割合が最も高いのは「29歳以下」で50.0%であり、年齢が上がるほどその割合は減少し、「70歳以上」では7.0%であった。一方、「経営を縮小する」の割合が最も高いのは「70歳以上」37.9%であり、その割合は年齢が下がるほど減少し、「29歳以下」で3.1%であった(表4・図2)。

表4 経営の今後の意向と農場責任者年齢階層別
図2 経営の今後の意向と農場責任者年齢階層別

4)「廃業したい」「廃業する計画がある」と回答した255農場の理由を見ると、「生産資材(飼料等)の高騰で儲からないから」が38.4%と高く、次いで「後継者がいないため」が35.3%と続き、この二つの理由で7割以上を占めていることが分かった(表5)。

表5 「廃業したい」、「廃業する計画がある」理由について

 

3 衛生対策関連調査結果

 

 農林水産省によると、20年度の国内生産量は、堅調な卸売価格や衛生対策の効果による事故率低減等から、前年度比1.1%増となった。21年度は、子取用めす豚頭数の増加や衛生対策の効果から、前年度比4.6%増となったと分析している。

 現場での衛生対策はどのようなものなのか、調査結果は以下の通りとなった。

(1)衛生全般について

1)農場における人の入退場管理(経営形態別、複数回答、回答農場数3,669)

 「対策をしている」割合が高いのは農協直営とその他が100%、次いで農事組合法人98.1%である。「何も対策をしていない」割合が高いのは個人経営14.9%であった(表6)。

表6 農場における人の入退場(経営形態別、複数回答、割合(%)、回答農場数3,669)について

2)豚導入時の対応の有無(経営形態別、回答農場数3,138)

 外部から生体を導入し、隔離検疫を要する3,138農場のうち、「隔離検疫を実施している」割合が最も高いのは農協直営で70.4%、「隔離検疫を実施していない」割合が高いのは契約農場・預託農場で76.2%となった(表7)。

表7 豚の導入時の対応の有無(経営形態別、割合(%)、回答農場数3,138)について

3)農場内への資材の搬入時の対策(経営形態別、回答農場数3,510)

 「対策をしている」割合が高いのは株式会社68.4%、次いで農協直営67.5%であった。「特別な対策をしていない」割合が高いのは個人経営70.8%、次いで契約農場・預託農場65.7%であった(表8)。

表8 農場内への資材の搬入時の対策(経営形態別、割合(%)、回答農場数3,510)について

4)野生動物の侵入防止策(経営形態別、複数回答、回答農場数3,647)

 「対策をしている」割合が高いのは株式会社90.1%、次いで農協直営89.7%であった。「特別な対策をしていない」割合が高いのは個人経営28.6%、次いで契約農場・預託農場26.0%となった(表9)。

表9 野生動物の侵入防止策(経営形態別、複数回答、回答農場数3,647)

(2)事故率について

1)事故率の平均(経営形態別、回答農場数2,845)

 「子豚舎・子豚豚房」の経営タイプ別事故率では、一貫経営が7.1%、繁殖経営が6.2%と一貫経営が高かった。一方、「肥育舎・肥育豚房」では、一貫経営4.2%、肥育経営4.0%と一貫経営が高かった(図3)。

図3 事故率の平均(経営形態別、回答農場数
    2,845)について
内訳:ア 子豚舎・子豚豚房2,582 農場、イ 肥育者・
肥育豚房2,398 農場、ウ アおよびイ期間通算
2,845 農場

 なお、繁殖経営の「肥育舎・肥育豚房」の事故率、肥育経営の「子豚舎・子豚豚房」の事故率、肥育経営の「子豚舎・子豚豚房」の事故率については、繁殖経営であっても出荷までに肥育舎・肥育豚房で飼育する期間や、肥育経営であっても子豚導入により一時子豚舎・子豚豚房で飼育する期間もあり、この期間の事故率が記入されたものとして集計している。

2)事故率改善への対策(複数回答・地域別、回答農場数3,511)

 事故率改善への取り組みに関して、「対策をした」のは80.0%で何らかの対策を実施している。実施した対策で効果があったもの(複数回答)では、「衛生対策」が88.6%と最も高く、次いで「生産環境の改善」が22.5%と高い割合を示し、「生産方式の変更」は4.6%と低かった(表10・図4)。

表10 事故率改善への対策(複数回答・地域別、回答農場数3,511)について
図4 事故率改善への対策(全国)

3)衛生対策の内容(複数回答・地域別、回答農場数2,464)

 衛生対策の内容では、「ワクチネーションプログラムの見直し、変更」が69.7%と最も高かった。20年に承認されたサーコウイルスワクチン効果も、事故率を低下させた大きな要因と思われる。次いで「豚舎消毒の徹底」51.0%が高い割合を示し、「農場HACCP」2.9%、「施設のゾーニング」2.8%は低かった。地域別に見ると、「ワクチネーションプログラムの見直し、変更」の割合が高いのは関東77.9%、低いのは近畿59.5%であった。また、「豚舎消毒の徹底」の割合が高かったのは九州・沖縄59.8%で、低いのは関東40.9%であった(表11)。

表11 衛生対策の内容(複数回答・地域別、回答農場数2,464)について

 

4 飼料関連調査結果

 

(1)エコフィードについて

1)現在使用している飼料(複数回答、地域別、回答農場数3,752)

 近年注目を集めているエコフィードの使用状況について、使用割合の年次別推移は平成15年10.0%、17年17.3%、18年13.9%、19年15.4%、20年19.3%、21年16.0%と増加傾向で推移してきた。地域別に見ると、食品産業が盛んな近畿が55.0%で最も割合が高く、次いで東海26.9%、中・四国22.6%、北陸17.6%となっている(図5)。

図5 現在使用している飼料

2)エコフィードを利用している農場の今後の意向(地域別、回答農場数568)

 エコフィードの使用を「このまま継続したい」が67.4%でもっとも高く、次いで「拡大したい」が29.0%「減らしたい」「中止したい」は合わせて3.5%であった。地域別では北陸と東海で継続・拡大したい意向が高かった(図6)。

図6 エコフィードを利用している農場の今後の意向

3)エコフィードを利用していない農場の今後の意向(地域別、回答農場数2,007)

 「新たに使用を始めたい」割合が高い地域は近畿で34.8%と、エコフィードの入手のしやすさなどが影響していると考えられるが、一方、「これからも使うつもりはない」としているのは、北海道・東北で割合が高かった(図7)。

図7 エコフィードを利用していない農場の今後の意向

(2)飼料用米について

1)飼料用米作付状況

 飼料用米の作付面積の推移は図8の通り、21年産は前年比260%増と、急速に増加している。

図8 飼料用米作付面積(全国)の推移
資料:農林水産省生産局畜産部畜産振興課調べ

2)飼料用米の今後の利用意向と拡大量

 飼料用米使用の今後の意向について、現在使用中の98農場のうち「このまま継続したい」が68農場、「拡大したい」が25農場、合わせて93農場が今後も使用するとしている(表12)。

表12 飼料用米の今後の利用意向と拡大量(回答農場数2,494)

 これらの意向から、飼料用米の今後の使用量を算出すると、継続使用量は約6,261トン、拡大量は1,133トンと見込まれる(中止予定量は10トン)。

 一方、現在使用していない2,398農場のうち、450農場が「使用を始めたい」としており、回答のあった農場の18.8%を占め、新規使用予定量は36,789トンとみられる。

 継続と新規を合わせた飼料用米の需要量は、44,173トンと見込まれることがわかった。


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