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フィッシャー・ボエル委員、直接支払制度の将来の方向性について講演


過去の所得水準を基準とする方式はもはや正当性を失っているとの見解

 欧州委員会のフィッシャー・ボエル委員(農業、農村担当)は、11月25日にストックホルムで開催されたEUの共通農業政策(CAP)の会合で、CAPの枠組みの下で措置されている生産者に対する直接支払制度についての将来の方向性について講演し、「現在の直接支払いの水準について、過去の所得水準がそうであったからと主張するのはもはや正当性を失っていることは明らかであり、直接支払いは特定の目的により強く関連付けられるべきである。」との見解を示した。これは、生産から切り離すこと(デカップリング)を目的として加盟国間で広く普及している過去の農業所得を基準として直接支払いの額を決定する方式(historical payments)について、欧州委員会としては是正が必要と認識していることを意味している。

 直接支払いの受給額は、過去の農業所得が基準となっているため既得権化しているといわれており、実際、1ヘクタール当たりの直接支払いの額は、2004年以降に加盟したEU12カ国の平均が200ユーロ弱(約26,400円:1ユーロ=132円)であるのに対し、EU15の平均は300ユーロ弱(約39,600円)と大きく異なっている。このため、同委員は、直接支払いのより適切な配分の問題について、「現行制度よりもさらに目的を絞った形で、良好な農地管理および食料安全保障に資する直接支払制度が解決策となると思う。ただし、現行制度と同様、現場で機能するものでなくてはならない。」と将来の方向性を示唆し、具体的には、クロスコンプライアンスの遵守を条件とする「基本レベル」の直接支払いと、土壌侵食の防止、景観の保護などの「基本レベル」を上回る取り組みに対する「特別レベル」の直接支払いの2本立ての制度への統合という案を披露した。


介入買い入れについても入札の要素を強めるべきと主張

 また、同委員は、2013年までに予定されている輸出補助金撤廃後のセーフティネットとして位置づけられる介入買い入れについても、現行の介入買入制度と同様44の措置は維持するものの、既に導入されている介入買入制度における入札の要素をより強める必要があるとの考えを示した。これは、固定単価での介入買い入れに限度数量を設け、限度数量を超過した場合に入札方式により買入単価を決定する方式を今後とも推進すべきとの視点に立っていると考えられる。

 一方、11月27日、バローソ欧州委員長は次期欧州委員のリストを公表し、農業、農村担当委員には、ルーマニア出身のCIOLOS氏となることが明らかになった。2010年1月26日の欧州議会の同意とその後に行われる欧州理事会による任命を経て新旧委員の引き継ぎが行われることとなるが、同氏が、前任者の改革路線をどこまで踏襲するかが注目される。

  (フィッシャー・ボエル委員の講演内容)
       http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=SPEECH/09/554&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

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