新たに輸出解禁となったアジアの市場 当コーナーでは、2009年3月号以降、畜産物の輸出事例を取り上げ、ここ数年で新たな市場へ輸出されるようになった牛肉、豚肉、牛乳、鶏卵を紹介してきた。経済成長の停滞や少子高齢化の到来により、国内マーケットが縮小するなか、国内の需給調整の面からも輸出は今後ますます重要視される。また、海外への新たな販路拡大は、所得の上昇、ブランド価値の向上などが期待されるため、生産の意欲を向上させるメリットも見逃せない。 牛肉輸出量は上位3カ国で9割を占める食肉の輸出額の半分を占める牛肉は、上位3カ国(ベトナム、香港、米国)で輸出量全体の9割を占めている。2009年1〜10月の輸出量は、牛肉全体では前年同期比6.4%減の428.9トンとなった。最大の輸出先であるベトナムは前年同期比2.4%減の261.3トン、2位の香港向けが同4.0%減の88.5トン、3位の米国向けが38.2%減の54.9トンといずれも前年をわずかに下回った。これに対し、今年5月から輸出解禁となったシンガポールは13.8トンと5カ月で4位につけており、新規マーケットへの輸出は好調の出足となっている。景気後退による既存マーケット向けの輸出量の減少により、今後の新規マーケットの伸びが期待される。
「新規マーケットを開拓し、現地習慣に則した料理方法を提案」今後のさらなる輸出拡大のポイントについて、輸出取扱者であるJA全農ミートフーズ株式会社の事業企画本部福田部長に話を聞いた。「牛肉輸出に取り組む食肉センターが増えてきたことから、海外市場でも産地間競争が始まっており、さらに今後進行していくと思われる。しかし、輸出のメリットは、日本全体の需給バランスの調整にあると考えてほしい。その上で大事なことは、まず、新たなマーケットを知り、開拓していくことである。現地の習慣・文化を知り、現地の調理器具・方法、味付けなどを考慮し、「日本料理」ではなく現地の料理に合った、和牛の食べ方も提案していかなければいけない。2009年(12月まで)の輸出量の見通しは前年並程度であるか、若干下回る程度か?米国の既存マーケットは成熟しつつあり、新しい売り先や売り方を考える必要があると感じている。」と、今後の課題について語ってくれた。また、「新規マーケットがあれば、どんどん輸出していきたいと考えている。豚肉の総菜や鶏肉も取り組んでいきたい。そのために現地食文化との関係を見直したい。」と、輸出事業の推進に意欲を示した。 協力:JA全農ミートフーズ株式会社 |
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