酪農乳業部 |
当機構では、乳製品の流通実態について、継続的に調査を実施しているが、21年度においても、20年度に生産された乳製品の業種別の仕向先や需要者の用途の実態について、乳製品の供給者(兼需要者)である乳業メーカーおよび需要者である食品製造業、外食業やホテルなどを対象として、21年10月〜12月に聞き取り(アンケート)調査を実施した(有効回収数は272社)。 主要乳製品であるバターおよび脱脂粉乳の業種別消費動向について見ると、バターは、「製菓・製パン業」「小売業」「乳業」が多く(72.0%)、脱脂粉乳は「乳業」、「はっ酵乳・乳酸菌飲料製造業」が多く(81.7%)なっている。また、用途別では、バターは「小売用」(家庭用バター等)「菓子・デザート類」「乳飲料」が多く(50.0%)、脱脂粉乳では「はっ酵乳・乳酸菌飲料」「乳飲料」「乳等主要原料食品」が多く(69.3%)なっている。 以下に、「乳製品の流通実態調査」(平成20年度生産実績)のうち、バターと脱脂粉乳の調査結果の概要を紹介する。 本調査は20年度の流通実態を対象としており、直近の21年度の状況を反映したものではない。また、内容については、アンケート回収率の維持等これまでの調査との継続性に配慮したが、基本的にアンケート結果に基づく推計である点を踏まえて、本調査を近年の傾向を知る上での参考として活用いただければ幸いである。 バター1 業種別消費量(推計)平成20年度における国内のバターの推定消費量は、77,900トン(農畜産業振興機構調べの推定出回り量)とし、その業種別の消費量推計注1)を行った結果は次のとおりである。 バターの流通経路と業種別消費量(推計)を図1、表1に示した。乳業メーカーのバターの推定供給量77,900トンのうち、国産バターが66,900トン、輸入バターが11,000トンとなっている。また、供給量のうち、社内消費仕向が14.9%、社外販売が85.1%となっている。社外販売量66,300トンのうち、需要者に直接販売されるのは34,600トン(全体の44.4%)で、一次卸が17,800トン(22.8%)となっている。また、二次卸を経由するのは4,800トン(6.2%)となっている。一次卸とは主に大手乳業系列販社、乳製品卸、大手食品卸である。
業種別消費量について見ると、「製菓・製パン業」が25,500トン(全体の32.7%)で最も多く、次いで「小売業」が19,000トン(24.4%)、バターを生産している「乳業」(社内消費)が11,600トン(14.9%)、同乳業の社外販売のうち、「バターを生産していない乳業・アイスクリーム製造業」が8,500トン(10.9%)、「外食・ホテル」が4,900トン(6.3%)、「調理食品製造業」が4,200トン(5.4%)、「加工油脂製造業」が2,100トン(2.7%)、「はっ酵乳・乳酸菌飲料製造業」および「飲料メーカー」がともに50トン(0.1%)となっている。国産バター66,900トンの内訳は「製菓・製パン業」が35.7%で、以下「小売業」が27.5%、「乳業(社内消費)」が10.3%、「乳業・アイスクリーム製造業」が9.1%、「外食・ホテル」が7.0%、「調理食品製造業」が5.1%となっている。また、輸入バター11,000トンの内訳は「乳業(社内消費)」が42.7%、「乳業・アイスクリーム製造業」が21.8%を占め、以下「製菓・製パン業」が14.5%となっている。 次に、平成16年度からの業種別消費量の推計値の推移を図2に示した。消費量合計の推移を見ると、16年度以降18年度にかけて80,000トン台で推移していたのが、19年度は90,000トン台に達したものの、20年度では77,900トンと大きく減少することとなった。
業種別内訳の推移を見ると、16年度以降「製菓・製パン業」の消費量が最も多く、18年度から19年度にかけては、30,000トン台で推移していたが、20年度は25,500トンと減少している。また、「外食・ホテル」においても、16年度から19年度にかけて10,000トン台で推移していたが、20年度は4,900トンと大きく減少に転じている。一方、「乳業・アイスクリーム製造業」では18年度から19年度にかけて6,000トン台に減少していたが、20年度に8,500トンに増加している。さらに「調理食品製造業」では16年度から19年度にかけて3,000トン台で推移していたが、20年度は4,200トンと増加に転じている。 2 用途別消費量(推計)バターの推定消費量77,900トンの用途別の消費量注2)を推計して見ると、「小売用」(家庭用バター等)が19,000トン(全体の24.4%)で最も多く、次いで「菓子・デザート類」が11,600トン(14.9%)、「乳飲料」が8,300トン(10.7%)、「乳等主要原料食品」が7,900トン(10.1%)、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が6,500トン(8.3%)、「マーガリン類」が5,300トン(6.8%)、「外食・ホテル用」(調理用等)が4,900トン(6.3%)、「パン類」が3,300トン(4.2%)、「アイスクリーム類」が1,900トン(2.4%)、「加工乳」が1,300トン(1.7%)となっている(図3、表2)。
国産バターの内訳は「小売用」が27.5%、「菓子・デザート類」が16.3%、「乳等主要原料食品」が11.4%、「乳飲料」が9.0%、「外食・ホテル」が7.0%、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が6.6%、「マーガリン類」が4.3%、「パン類」が3.3%、「アイスクリーム類」が2.4%となっている。 輸入バターの内訳は「マーガリン類」が21.8%、次いで「乳飲料」が20.9%、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が19.1%、「パン類」が10.0%、「菓子・デザート類」が6.4%となっている。 次に、平成16年度からの用途別消費量の推計値の推移を図4に示した。平成19年度までの推定消費量は90,000トン程度で推移していたが、平成20年度は79,900トンと大幅に減少していることが分かる。
用途別の推移を見ると、「小売用」の消費量が各年度とも最も多くなっている。「菓子・デザート類」は19年度に14,200トンと回復の兆しを見せたものの、20年度では再び11,600トンと減少している。「パン類」は16年度にかけて、14,000〜15,000トンで推移していたが、20年度では3,300トンと大きく減少している。同様に「外食・ホテル用」でも16年度から19年度にかけて10,000〜12,000トンで推移していたが、20年度では4,900トンと大きく減少している。 一方、「乳等主要原料食品」では19年度において大幅な増加を見せたが、さらに20年度では7,900トンと増加している。また「乳飲料」では16年度から19年度にかけて減少傾向が続いていたが、20年度では8,300トンと大きく増加している(図4)。 脱脂粉乳1 業種別消費量(推計)平成20年度における国内の脱脂粉乳の推定消費量は、155,500トン(農畜産業振興機構調べの推定出回り量)とし、その業種別の消費量推計を行った結果は次のとおりである。 脱脂粉乳の流通経路と業種別消費量(20年度推計)を図5、表4に示した。乳業メーカーの脱脂粉乳の推定供給量は155,500トンで、すべてが国産脱脂粉乳と推計した。また供給量のうち、乳業の社内消費仕向が33.9%、社外販売が66.1%となっている。社外販売量102,800トンのうち、需要者に直接販売されるのは88,500トン(全体の56.9%)で、一次卸が13,400トン(13.0%)となっている。
業種別消費量について見ると、脱脂粉乳を生産している「乳業(社内消費)」が52,700トン(全体の33.9%)、同乳業の社外販売のうち、「脱脂粉乳を生産していない乳業・アイスクリーム製造業」が48,400トン(31.1%)、次いで「はっ酵乳・乳酸菌飲料製造業」が26,000トン(16.7%)、「製菓・製パン業」が6,400トン(4.1%)、「調理食品製造業」が5,850トン(3.8%)、「加工油脂製造業」が5,600トン(3.6%)、「飲料メーカー」が5,300トン(3.4%)となっている。 次に、平成16年度からの業種別消費量の推計値の推移を図6に示した。消費量合計の推移を見ると、18年度の187,400トンから19年度は197,000トンと増加に転じたが、20年度では155,500トンと大幅な減少となった。
業種別内訳の推移を見ると、19年度の69,800トンから20年度は52,700トンと大きく減少したが「乳業・アイスクリーム」の消費量が最も多くなっている。また、「乳業(社内消費)」「はっ酵乳・乳酸菌飲料製造業」「製菓・製パン業」「加工油脂製造業」「飲料メーカー」「調理食品製造業」「小売業」「外食・ホテル」など19年度に比べると、全体的に減少している。 2 用途別消費量(推計)脱脂粉乳の推定消費量155,500トンの用途について見ると、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が61,700トン(全体の39.7%)で最も多く、次いで「乳飲料」が31,500トン(20.3%)、「乳等主要原料食品」が14,500トン(9.3%)、「飲料」が11,700トン(7.5%)、「アイスクリーム類」が10,200トン(6.6%)、「加工乳」および「菓子・デザート類」がともに5,000トン(3.2%)、「マーガリン類」が3,900トン(2.5%)となっている(図7、表5)。
次に、平成16年度からの用途別消費量の推移を図8に示した。平成19年度までの推定消費量は200,000トン程度で推移していたが、平成20年度は155,500トンと大幅に消費量が減少していることが分かる。
用途別内訳の推移をみると、19年度から20年度にかけて「はっ酵乳・乳酸菌飲料」「乳飲料」「アイスクリーム」「加工乳」「飲料」「パン類」「菓子・デザート類」「マーガリン類」「調理食品」「小売用」(家庭用スキムミルク等)「外食・ホテル用」(調理用等)など全体的に顕著な減少傾向が見られる中で、「乳等主要原料食品」「調製粉乳」では増加している。 注1)業種別消費量:乳製品がどのような業種において消費されたかについて推計したもの。 |
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