米国農務省は4月16日、ブラジルのサンタカタリーナ州を口蹄疫、牛疫、豚水疱病、豚コレラ、アフリカ豚コレラの清浄地域リストに追加するため、これら家畜伝染病に係る輸入規制に関する規則を改正する旨の提案を発表した。この提案は米国向け豚肉輸出の開始を希望するブラジル政府の要請を受けたものであり、実現されれば、豚肉以外にも、同州からの生体豚、牛肉、生体牛などの輸入規制の緩和につながることになる。
今回の提案は、米国、ブラジル間の綿花紛争に関連する合意の一環
今回の米国農務省の提案は、米国とブラジルの間で行われていた綿花紛争に係る協議の中で示された合意内容の一つである。
両国間の綿花紛争については昨年8月、WTOにより米国の綿花農家に対する生産・輸出補助金が国際ルール違反と判断され、ブラジルによる対米報復措置が認められていた。このため、ブラジルは4月7日より米国産輸入品に対して高関税を課すとされていたが、両国間の協議により、当該報復措置の延期が4月6日に両国間で決定されたところである。米国は同協議の中で、ブラジルが対米報復措置を延期する代わりに、ブラジル綿花農家への技術的支援のために年間147百万ドル(約139億7千万円:1ドル=95円)の拠出、輸出信用保証プログラム(GSM-102)の改正、4月16日までに同国のサンタカタリーナ州を口蹄疫、牛疫、豚水疱病、豚コレラ、アフリカ豚コレラの清浄地域として認定する規則改正を提案すること、などを約束していた。
サンタカリーナ州の清浄地域への追加について、畜産関係団体はそれぞれの立場から懸念を表明
綿花紛争に関連した米国農務省の今回の提案について、NPPC(全国豚肉生産者協議会)は、「科学的評価に基づく決定である限り、清浄地域の見直しについては賛成するが、ブラジルも科学に基づいた検疫措置を採用すべきであり、特に、現在行われている米国産豚肉に対する旋毛虫感染症に係る輸入規制については懸念を表明したい」と、今回の見直しを契機に、ブラジル側にも検疫措置の改善を促すコメントをしている。他方、NCBA(全国肉牛生産者・牛肉協会)は、「科学に基づいて行われるべき決定が、貿易交渉の取引材料として扱われたことに懸念を表明する。我々は、米国の家畜衛生が脅かされないような厳格な衛生基準を支持しており、今回の提案が決定された場合には、ブラジルが米国および国際的な衛生基準に確実に合致していることを米国政府に保証させたい」とコメントしている。
ブラジル産豚肉、牛肉の輸入開始には、米国農務省によると畜施設の調査が必要
規則改正案が最終規則になるには9〜12カ月間かかるとみられており、また、輸入開始のためには、米国農務省の調査により、ブラジルのと畜施設が米国の衛生管理基準を満たしているとの証明が必要であることから、ブラジル産豚肉、牛肉がすぐにも米国内に輸入されるということはない。今回の提案は6月15日までパブリックコメントを受け付けており、今後の動きが注目されるところである。
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