酪農乳業部 乳製品課、酪農経営課
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わが国の酪農乳業界は、ここ数年、かつてないほどの激しい需給変動に見舞われている。その原因は、乳製品・飼料穀物・エネルギー等の国際市況、国際金融危機、為替相場など、グローバルな要因の影響力が増加していることにある。米国に端を発する金融危機が直ちに国内にも深刻な不況と消費停滞をもたらすなど、影響の度合いのみならず、そのスピードも増している。実際、昨年末までは乳製品の需給ひっ迫を懸念していたところ、半年を待たずに需給の局面が反転し、今や深刻な需給緩和が懸念される状況となっている。これからは、激しい変化に遅れをとることなく、内外の諸状況を正確に把握し、迅速かつ的確に対応することが求められている。 当機構では、需給動向把握の参考に資するため、「畜産の情報」やホームページを通じて牛乳乳製品に関連した様々な統計等の情報を提供している。これらのうち、機構の業務として実施している指定乳製品の輸入・売買に関する事項、主要乳製品の在庫量調査、加工原料乳生産者補給金の交付業務に係る指定団体の取扱数量について解説する。 本稿が機構の提供する統計情報等のさらなる活用につながれば幸いである。 指定乳製品等の輸入及び売渡し1.輸入(1)機構が実施する輸入の種類 機構は、法律(加工原料乳生産者補給金等暫定措置法)の規定に基づき、指定乳製品等について、次の輸入を行っている。 (1)国際約束に基づく輸入 わが国は、平成5年12月に妥結した多国間貿易交渉(ガット・ウルグアイ・ラウンド)における国際約束に基づき、平成7年度以降、毎年度、生乳換算で13万7千トンの指定乳製品等を輸入している。これは、カレント・アクセス(現行輸入数量)輸入と称され、機構は、国家貿易機関として一元的にこの輸入を行っている。 輸入する指定乳製品等の品目、数量、時期などについては、機構が毎年度、国内の指定乳製品の需給・価格動向等を勘案し農水省と協議して決定している。 (2)価格騰貴時の輸入(追加輸入) 機構は、国内の指定乳製品の価格が著しく騰貴し、又は騰貴するおそれがあると認められるときは、農林水産大臣の承認を受けて、指定乳製品等を輸入することができるとされている。最近では、平成20年度においてバターを5千トン輸入した。 (2)輸入の方法及び品目 (1) 輸入業務の委託 実際の輸入に当たって機構は、国際約束を確実に履行し、又は価格高騰時に必要な数量を確実かつ迅速に輸入するため、機構の業務方法書の規定等に基づき、競争入札を実施した上で、落札した指定輸入業者等に輸入業務を委託している。 (2) 輸入品目 機構が上記業務で輸入することができる指定乳製品等は法令によって定められており、指定乳製品(バター、脱脂粉乳、全脂加糖れん及び脱脂加糖れん乳)のほか、関税定率法別表の以下のものが含まれる。 ◇第04.02項(第0402.91号又は0402.99号の1の(1)に掲げるものを除く。):加糖脱脂粉乳、全脂粉乳、全脂加糖粉乳、脱脂加糖粉乳 ◇第0403.90号の1に掲げるもの(バターミルクパウダーその他の固形状のものに限る。):バターミルクパウダー(加糖・無糖)、高脂肪粉乳(加糖・無糖) ◇第0404.10号の1に掲げるもの:ホエイ(加糖・その他) ◇第04.05項に掲げるもの:デイリースプレッド、バターオイル 〔注:いずれも指定乳製品に該当するものは記載していない。〕 このうち、カレント・アクセス輸入の対象として実績がある品目及びそれらの概要等は以下の通りである。 【バター】 生乳から得られた脂肪粒を練圧(チャーニング)したものである。機構が輸入するバターは、菓子、パン、飲料などの原料として利用されている。機構は無塩スイートバター(非発酵製品)、加塩バターのほか、乳酸菌による発酵タイプのバターも取り扱っている。 【脱脂粉乳】 生乳の乳脂肪分を除去したもの(脱脂乳、スキムミルク)からほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものである。機構が輸入する脱脂粉乳は、菓子、パン、飲料などの原料として利用されている。 【ホエイ及び 調製ホエイ】 生乳を乳酸菌で発酵させ、又は生乳に酵素若しくは酸を加えてできた乳清(チーズ・カードを除いた液体)から、ほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの及びその成分であるタンパク質を濃縮したものである。機構は、ホエイ及び調製ホエイを、タンパク含有率によって5種類のカテゴリーに区分して取り扱っている。当機構が輸入するホエイ及び調製ホエイは、菓子、パン、飲料、ヨーグルトなどの原料として利用されている。 【デイリースプレッド】 デイリースプレッドは、乳脂肪分が全重量の39%以上、80%未満で(80%以上はバター)、乳脂肪以外の油を含まず、脂肪の中に水がある状態(油中水滴型)であり、脂肪と水が混ざりあっており(乳化状態)、展延性を有するものである。機構は、デイリースプレッドを乳脂肪分含有率によって2種類のカテゴリーに区分して取扱っている。機構が輸入するデイリースプレッドは、飲料、アイスクリームなどの原料として利用されている。 【バターオイル】 バターオイルは、平成21年度に新たに対象として追加した品目で、バター又はクリームからほとんどすべての乳脂肪以外の成分を除去して製造されるものである。マーガリン、菓子、アイスクリームなどの原料として広範に利用されている。 2.売渡し (1)売渡しの種類 機構は、法律(加工原料乳生産者補給金等暫定措置法)に基づき、指定乳製品等について、(1)指定乳製品の価格が著しく騰貴し、又は騰貴するおそれがあると認められるとき、及び(2)指定乳製品の生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、指定乳製品の消費の安定に資することを旨として農林水産大臣が指示する方針によるときに、売り渡すこととなっている。 (2)入札の種類 売渡しについては、(1)社団法人日本酪農乳業協会が開催する「乳製品取引市場」に上場して実施する売渡入札、又は(2)売買同時方式(SBS)*により入札による売渡しを行っている。 *売買同時方式(SBS)による入札は、輸入業者と需要者が、同一入札書に連名で機構の買入価格と機構からの売渡価格を記載して応札する方法。 機構は売買差額の大きいものから、順次、買入予定数量に達するまで落札し、輸入業務委託相手先及び売渡相手先を同時に決定する(ホエイ及び調製ホエイ、デイリースプレッド、バターオイルについて実施)。 なお、機構の指定乳製品等の輸入及び売渡しの状況については、「畜産の情報」及びホームページに、「機構による指定乳製品等の売買状況」(表1参照)として月ごとのデータを公表している。また、入札公告及び入札結果については、その都度ホームページに掲載しているほか、過去の実績も閲覧することができる。
3.一般輸入に係る買入れ及び売戻し ガット・ウルグアイ・ラウンドの国際約束に基づき、指定乳製品等の輸入は関税化され、平成7年度から定められた関税相当量を支払えば、誰でも指定乳製品等を輸入できることとなった。これに伴い、機構は、内外価格差の調整を図るため、輸入する者から買入れ、直ちに売戻す方式により、関税相当量の一部を徴収する業務を行っており、その実績についてはホームページで毎月公表している。
乳製品の輸入統計については、「畜産の情報」の巻末資料やホームページを通じて提供しているが、そのうち「主要乳製品の輸入動向」について、記載されている乳製品の項目とその具体的な内訳を整理した(実行関税率表の統計番号ベースでの対応関係については、参考の表を参照)。 |
表3 主要乳製品の輸入
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表4 主要乳製品の輸入価格(CIF)
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(参考)「主要乳製品の輸入動向」の集計対象乳製品の実行関税率表における統計番号について
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表5 品目別バター在庫量
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表6 平成22年1月分 指定生乳生産者団体別の受託販売生乳数量等(速報)
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