需給動向 海外 |
増加傾向で推移するタイの鶏肉調製品の輸出 |
2010年6月以降の国内価格は低下傾向で推移タイ国内のブロイラー卸売価格(生体)は2009年9月以降、前年同月を上回って推移していたが、2010年7月および8月に入り前年を下回った。2010年に入ってからは、タイ国内の干ばつによる飼料価格の高騰、高温によるブロイラーの事故率の上昇や増体率の低下から、価格は堅調に推移していたが、5月中旬からの降雨により生産状況が好転したため、5月の1キログラム当たり46.7バーツをピークに、6月は42.3バーツ、7月は34.9バーツ、8月は36.6バーツと低下傾向で推移した。 生産量については、旺盛な生産意欲にもかかわらず上述の高温などの影響により、1月〜4月までは7千万羽前半の水準にとどまっていたが、5月以降、5月は7950万羽(前年比4.6%増)、6月は7690万羽(同2.3%増)、7月は8150万羽(4.7%増)と、生産量は前年を上回って推移した。8月は雨期に入り、比較的低温傾向で推移しているとみられ、生産量は引き続き増加基調にあるものとみられる。 国内需要についてはタイの政変がひとまず収束し、観光需要が増加するなど一定程度の回復はみられるが、生産量の増加の方がこれを上回ることから、価格の低落につながっているものとみられる。 2010年1〜8月の鶏肉調製品の輸出量は増加、価格は前年に比べ低迷2010年1月〜8月における鶏肉調製品の輸出量は25万6千トンであり、前年同期に比べ13.1%の増加となった。このうち日本向けは11万1千トンで、同13.5%の増加である。月別にみると、4月を除き前年を上回って推移し、特に6月以降増加が顕著である。日本向けは1−2月が前年同月を下回る一方、3月以降は前年同月を上回って推移している。特に4月以降の増加が顕著になっている。 主要な輸出先国は日本、英国、オランダである。1〜8月の累計数量でみた各国のシェアはそれぞれ43.4%(113千トン)、33.3%(85千トン)、7.9%(20千トン)と3カ国で8割以上のシェアを占めている。この3か国向けの輸出量は前年に比べ、それぞれ1割以上増加している。その他、シンガポール、韓国への輸出が前年に比較してそれぞれ26.2%(累計数量8千トン)、63.8%(同6千トン)増加している。 一方、輸出価格については、1月〜8月までの平均で1トン当たり126,613バーツであり、前年同期比で7.1%安、日本向けを見ても136,075バーツで同11.6%安と前年に比較すると安値傾向で推移している。ただし、これは輸出価格が上昇した2009年との比較であり、2005年から2007年にかけての価格11万〜12万バーツに比較すると、堅調に推移している。 米国農務省(USDA)によれば、EU向けの代表的な輸出形態としては、皮なし骨なし胸肉(SBB,steamed dice-shape-cut skinless boneless breast)であるとされている。 生産量・輸出量は増加も、生産コスト上昇USDAの直近の報告によると、鶏肉生産量は2010年が前年比106.7%の128万トン、2011年が同107.8%の138万トンと2年連続で増加することが予測されている。USDAは増産見込みについて、2008年および2009年の鶏肉の収益性が高かったことにより、各インテグレーターが大幅に設備の増強を行ったことが背景にあるとしている。 具体的には、輸出市場のニーズを踏まえた調製品加工施設や、事故率低下のための鶏舎の気化冷却システムなどに対して設備投資が行われた。 一方、生体重量ベースでの生産コストは2009年の1キログラム当たり32〜33バーツから、2010年には35〜36バーツに10%程度上昇すると推測されている。これは飼料コストの6割を占めるトウモロコシの価格が16〜17%上昇するなどの影響によるものである。このため、2010年当初には飼料の一部を国内産トウモロコシからロシアやウクライナからの低品質小麦に置き換える動きがあったが、小麦需給がタイトになり行われなくなったとも報告されている。 USDAは鶏肉の輸出量についても2009年の37万9千トンから、2010年には41万トン、2011年には44万トンへと生産量と同様に増加すると予測している。 EUについては、非調理塩蔵鶏肉(HS02109939)に264,245トン、調理済み鶏肉(HS16023219)に250,953トンの関税割当数量が定められている。このうちタイにはそれぞれ92,610トン、160,033トンが割り当てられている。割当数量内関税はそれぞれ15.4%と8%となっている(割当外関税はそれぞれ1トン当たり1300ユーロ、1024ユーロ)。 また、非調理鶏肉が57%以上含まれている製品、調理済み鶏肉が25-57%もしくは25%未満の割合で含まれている製品等については、関税割当数量の対象外でタイからの輸出が可能である。EUは2009年にそれらのコードについても関税を引き上げる措置を行ったが、2010年もこのカテゴリーで2009年の輸入量17,657トンを上回る2万〜2万5千トンがEUに輸出されるとみられている(調理済み鶏肉が57%以下含まれている製品の現在の関税は10.7%。)
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