ブロイラー生産量は前年を上回る水準で推移
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)の「Poultry Slaughter」によると、2010年8月のブロイラー生産量は前年比5.8%増の144万6千トンとなった。これは、7月の処理場稼働日数が前年より1日少なく処理羽数が落ち込んだ反動や、生産者が導入羽数を増加させていることなどにより、8月の処理羽数が同5.5%増となったことが要因となっている。また、2010年1〜8月の生産量は前年同期比2.4%増の1096万7千トンとなった。
図1に米国の主要19州におけるブロイラー向けひな週間導入羽数の推移を示しているが、2010年4月上旬以降、前年を上回って推移していることが分かる。
2010年の導入羽数は、例年の季節変動に伴い、秋に向けて減少傾向で推移しているものの、その水準は2006-08年の平均に接近してきている。今後、生産者が現在の増産意欲を維持し、2006-08年と同程度の導入を行うのか、それとも、最近のトウモロコシ価格の上昇を踏まえ、導入を抑える方向に転じるのか、今後の動きが注目されるところである。
なお、USDA経済調査局(USDA/ERS)が9月17日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」では、トウモロコシ価格上昇に伴う飼料コストの増加を踏まえ、2011年のブロイラー生産量について、前回推測値を0.7%下回る1693万トンに下方修正している。
骨付きもも肉の在庫、依然として過剰傾向
骨付きもも肉(レッグクォーター)の主な輸出先であるロシアとの輸出再開に時間を要していることから、同部位の過剰在庫が解消されない状況にある。USDA全国農業統計局(USDA/NASS)の「Cold Storage」によると、2010年8月末時点の骨付きもも肉在庫は、3カ月連続で増加し前月比8.6%増の5万7千トンとなった。また、8月の卸売価格(北東部)は、前月よりも上昇はしているものの、前年を1.0%下回る1ポンド当たり40.4セント(約34円:1ドル=84円)となった。このような中、在庫削減を図るため、USDAは9月7日、骨付きもも肉など鶏肉のダークミート(注)を食料援助事業の中で3000万ドル(約25億2千万円)分買い上げることを発表した。今回は、6月の1400万ドル(約11億8千万円)規模の買い上げに続く本年2回目となるものであり、この政府の追加措置からも、過剰在庫がなかなか解消されない状況が伺える。
注:鶏もも肉など色合いが濃い肉を指す。
中国が米国産鶏肉製品に対して2つの関税措置を決定
鶏足(もみじ)の主要輸出先である中国は、米国産鶏肉製品に対して2つの関税措置を今後5年間実施することを決定した。一つは、米国産鶏肉製品のアンチダンピング輸出に対抗して50.3〜105.4%のアンチダンピング関税を、もう一つは、米国の補助金に対抗して4.0〜30.3%の相殺関税を課す内容となっている。これらの関税については、本年2月から43.1〜105.4%のアンチダンピング関税が、4月から3.8〜31.4%の相殺関税が暫定措置として実施されてきたが、今回の発表により本格実施されることとなった。米国の鶏肉団体は中国の決定を不当としており、WTO提訴も視野に入れた対抗措置を政府に要請すべく検討している。今後の動きに注視したい。
図4 ブロイラー向けひな週間導入羽数の推移 |
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資料:USDA「Broiler Hatchery」 |
図5 骨付きもも肉卸売価格と在庫量の推移 |
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資料:USDA「Cold Strage」等
注:在庫量の定義は、2009年1月および2010年5月に変更されている。 |
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