需給動向 海外 |
粗粒穀物:需給が均衡する中、価格は上昇 |
大麦は大きく減産、一方、トウモロコシは過去最高の生産量国連食糧農業機関(FAO)が直近時(9月)に公表した「穀物見通しと食料事情に関する報告(Crop Prospects and Food Situation)」によると、2010年(1〜12月)における世界全体の粗粒穀物生産量は、前年を0.3%下回る11億2,200万トンが見込まれている。減少理由としては、ロシアなどCIS(独立国家共同体)諸国、EU地域での大麦生産が、気候変動により大きく減少したことが挙げられており、生産量は前年を14%下回る1億3,000万トンが見込まれ、この40年間で最低水準とされる。 一方、トウモロコシ生産は、世界の第1位、2位の生産国である米国と中国で豊作となり、米国では単収が前年を割り込むものの高水準とされ、中国では過去最高の生産量が見込まれている。このため、世界全体のトウモロコシの生産量は、前年を2.5%上回る8億4,200万トンとなり、過去最高の生産量が見込まれている。 2010年における世界全体の需要量は生産量と同程度が見込まれており、前年を0.3%下回る11億2,200万トンとされる。需要量のうち、飼料向けトウモロコシは前年並みと見込まれているが、大麦はロシアの減産から前年を6%下回るとされる。また、工業向けは、米国のトウモロコシ由来のエタノール生産は減速傾向とされているが、工業向け全体は、今後も拡大が見込まれている(表1)。
気になる主要穀物輸出国、地域での在庫減少2010年の粗粒穀物需給は均衡しており、期末在庫は前年を3%下回る2億800万トンが見込まれている。また、2010年の在庫率は17.9%となり、前年の19.1%を1.2ポイント下回るものの、食料価格が高騰し低水準の在庫率であった2007年の15.8%からは2.1ポイント上回る。その一方で、需給に与える影響が大きい主要穀物輸出国、地域(アルゼンチン、豪州、カナダ、EU27カ国および米国)での在庫率は、前年の12.5%を下回る10%が見込まれている。 これは、2010年における世界全体のトウモロコシ貿易量が増加しているように、CIS諸国やEU地域での大麦、トウモロコシの輸出量が減少することで、アルゼンチンなどからの輸出量が増加したためとしている。 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が、穀物市場レポート(Grain: World Markets and Trade、10月)で、中国などでの在庫水準が国際需給の緩和に与える影響は限定的であると指摘しているように、FAOによると、主要輸出国の在庫率が2007/08年度の12%を2ポイント下回ることは、今後の国際需給の懸念材料として指摘している。 特に、米国でのトウモロコシ在庫は、1996/97年度以来14年ぶりの低水準が見込まれ、また、EU27カ国のトウモロコシ、大麦在庫も同様に低水準であることが、在庫率の押し下げ要因としている。 なお、アジア諸国では、飼料向けの小麦価格が上昇したことで、粗粒穀物の輸出が活発化すると指摘している。 価格は上昇、それでも2008年高騰時の3割安穀物などの国際価格は、気候変動による減産および生産国での禁輸措置により、7月初旬から上昇している。9月の米国のトウモロコシ価格(米国ガルフ積み出しのNo.2 Yellow)は、1年ぶりに高値を付け、小麦価格(米国Fobガルフ積み出しのNo2 Hard Red Winter Ord. Prot.)は、6月から7割上昇している。特に、大麦価格は急騰し、昨年から2倍の値を付けている。 FAOはこの状況について、国際価格は高水準を示しているが、それでも2008年6月の高騰時から見れば、依然、価格は3分の1程度下回る水準であるとしており、また、USDA/FASは、主要輸出国の在庫は不足しているが、これから生産が始まる南半球での生産量が加わることで、国際需給への不安は解消されるとしている。
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