生乳生産は、比較的高水準の初期生産者乳価提示により回復の見込み
豪州農業資源経済局(ABARE)が9月に公表した農畜産物需給見通しによると、
2010/11年度(7〜6月)の生乳生産量は、過去14年間で最低の水準となった前年度に比べ2.6%増の925万キロリットルと予測している。しかし、度重なる干ばつを経験した過去10年の平均と比べると7.2%低い水準である。
この要因として、
①5〜7月にかけて提示された初期乳価が前年度を5〜6%上回るとともに、今後も引き上げが見込まれ、平均乳価は前年度比3.2%増の1リットル当たり38.5豪セント(32円:1豪ドル=83円)と見込まれること
②前年度後半から回復傾向にある国際乳製品価格について、2010/11年度は前年度をわずかではあるが上回ると見込まれること
③2000/01年度以降、減少傾向にある経産牛飼養頭数については、前年度並みの163万頭にとどまるものの、秋冬の降雨に恵まれ、夏季の牧草が潤沢であり、また利用できるかんがい用水(※)の増加が見込まれることなどから1頭当たり搾乳量の増加が期待できること
などが挙げられる。
一方、国内飼料穀物価格について、前年度より値を上げるとみられ、生乳生産に影響を与えると予測されている。肥料価格については、国際肥料価格が上昇基調にあるものの、豪ドル高により、国内価格への影響は小さいとみられる。
(※)10月8日、マレー・ダーリング川流域庁(MDBA)は、かんがい用水利用量を制限する「流域計画(案)」を公表したところであり、今後の議論のゆくえが注目される。
表4 生乳、乳製品生産にかかる予測 |
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乳製品輸出額(百万豪ドル) 2,679 2,066 2,231
資料:ABARE |
乳製品輸出額は、前年度比8%程度増加と予測
生乳、乳製品生産量の増加および輸出量の回復が見込まれる中、2010/11年度の乳製品輸出額は、前年度比8%増の22億豪ドルと予測されている。品目別にみると、バターは同17%増の2.5億豪ドル(208億円)、チーズは同8%増の7.7億豪ドル(643億円)、全粉乳は同5%増の3.1億豪ドル(259億円)、脱脂粉乳については同13%増の4.0億豪ドル(334億円)と軒並み増加するとみられる。なお、世界市場の見通しとして、粉乳貿易量は、中国およびASEAN諸国からの需要に左右されるとしている。チーズ貿易量については、ロシアおよび日本からの需要増が見込まれるものの、弱い米国からの需要を反映し、かなり減少するとみられる。
図11 乳製品輸出額にかかる予測 |
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資料:ABARE |
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