5月以降低下傾向で推移していた脱脂粉乳卸売価格（食品グレード）は9月に前月比3.2％増の100キログラムあたり228.6ユーロ（約26.289円：1ユーロ＝115円）と上昇に転じた（図8）。9月9日および23日に2010年に入って初めてとなる脱脂粉乳に係る介入買入在庫の放出が行われたが、最低落札価格は卸売価格に準じた水準であり、放出量もそれぞれ1,700トン、820トンとごく少量にとどまったことから、市場への影響は観察されなかった。

　 図9は、欧州委員会が公表した2010年4月から7月期における集乳量および乳製品生産量の変化率を示したものであるが、集乳量は前年同期比で0.9％増となっているにもかかわらず、脱脂粉乳は同7.7％減、バターは2.6％減となっている。これは、増産されているチーズ（同2.8％増）に生乳がより多く仕向けられた結果、脱脂粉乳およびバターの生産に仕向けられる生乳が減少し、これらの生産が減少したことによるものと理解することができる。このように脱脂粉乳およびバターの生産が限られている一方で、介入買入在庫の放出もごく少量にとどまっていることが、両者の卸売価格にプラスの効果を与えていると考えられる。

脱脂粉乳の介入買入在庫約19万トンのうち9万4千トンを2011年の食料支援制度で処理する計画

　 このような中、10月4日に生活困窮者への食料支援制度に係る2011年計画案が取りまとめられ、同計画案において介入買入在庫の活用を脱脂粉乳93,899トン、バター1,543トンとそれぞれ見込むこととなった旨公表された。今後この計画案が欧州委員会における採択を経て実行に移されれば、将来市場に放出される可能性のある脱脂粉乳は10万トン弱とほぼ半減し、バターについては、介入買入在庫はすべて解消することとなる。2010年における同制度の介入買入在庫処理量は、脱脂粉乳65,290トン、バター51,148トンであったことを考えると、2011年計画案において積極的に脱脂粉乳の介入買入在庫量の処分を図るという方針がうかがえる。本年春先には、大量の脱脂粉乳に係る介入買入在庫量の処分について模様眺めの展開となっていたが、今般の計画案が採択されれば、将来市場に戻されることとなる介入買入在庫が半減することとなることから、脱脂粉乳の市場は当面堅調に推移するとみられる。

図8　脱脂粉乳の卸売価格の推移

資料：ZMB 　 注：ドイツの脱脂分乳（食品グレード）卸売価格を指標とした。

図9　EU27における2010年4〜7月期の集乳量および乳製品生産量の変化率（前年同期比）

資料：欧州委員会

図10　バターの卸売価格の推移

資料：ZMB 　 注：オランダのブランドバターの卸売価格を指標とした。