需給動向 海外 |
増産の兆候が見え始めた豚肉産業 |
12〜2月の分娩頭数は前年同期を上回る見込み米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が9月24日に公表した「Quarterly Hogs and Pigs」によると、本年9月1日現在の豚総飼養頭数は前年を2.6%下回る6499万1千頭となった。このうち、繁殖母豚頭数は前年比1.8%減の577万頭となっており、10四半期連続で前年を下回った。繁殖母豚頭の減少は、2009年の需給緩和に伴う価格低迷を踏まえ、生産者が自主的にとう汰を行ってきた結果であるが、今年に入り肥育豚価格が堅調に推移し収益性が改善するにつれて、本年3月1日時点では同3.9%あった減少幅が次第に小さくなってきている。 肥育豚飼養頭数も前年比2.7%減の5922万1千頭となっており、8四半期連続で前年を下回った。体重別に見ると、180ポンド(約81.6キログラム)以上、120〜179ポンド(約54.3〜81.6キログラム)、50〜119ポンド(約22.7〜54.3キログラム)、50ポンド(約22.7キログラム未満)のグループごとに、前年比をそれぞれ、5.6%、3.4%、2.0%、1.1%下回った。体重が軽くなるにつれ削減率が減少する傾向にあるが、これは、出荷時期の本年9月から来年2月前後の期間において、出荷頭数が徐々に前年水準に近づいてくることを示唆している。 母豚分娩頭数については、本年9〜11月は前年同期比1.2%減の288万1千頭と予測されているが、本年12月〜来年2月は同0.5%増の2886千頭とされており、10四半期ぶりに前年を上回ることが見込まれている。1腹当たりの産子数は衛生環境の改善などから前年を上回って推移していることから、本年9月以降の子豚生産頭数は横ばいないし増加傾向で推移することが見込まれる。 今後出荷予定の肥育豚飼養頭数や母豚分娩頭数の傾向から、生産サイドの増産に向けた動きが見て取れる。USDAは9月17日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」において、2011年の豚肉生産量を前年比2.0%増の1026万9千トンと予測している。
2010年に入り、豚肉輸出は好調を維持生産者の自主的な母豚削減などにより、本年1〜8月豚肉生産量が前年比3.8%減の654万4千トンとなる中、豚肉輸出は好調を維持している。USDA経済調査局(USDA/ERS)によると、2010年1〜7月までの豚肉輸出量(枝肉重量ベース)は前年同期比5.6%増の111万4千トンとなった。国別の内訳を見ると、メキシコ向けが大きく伸びていることが分かるが、これは同国の景気回復が遅れている中、安い価格帯にある豚肉の需要が根強いことが要因である。また、ロシア向けの大幅な落ち込みは、抗生物質の残留問題で本年春まで輸出が停止されていたことが大きく影響している。
堅調な価格を反映し増産が加速する可能性、しかし、飼料価格の動向がポイント生産減、輸出増などにより需給がタイトになっていることから、豚肉価格は前年と比べ大幅に上昇している。本年9月の豚肉卸売価格(カットアウトバリュー)は前年比65.2%高の100ポンド当たり91.0ドル(キログラム当たり169円:1ドル=84円)、肥育豚価格(赤身率51〜52%)は同62.1%高の同60.7ドル(同112円)となった。また、卸売価格は小売価格にも転嫁されており、8月10日時点の豚肉小売価格も1ポンド当たり323.2セント(約271円)と過去最高値を記録した。このような状況を反映して増産傾向が加速すれば、現在の価格水準は弱含むことが想定される。しかし、最近のトウモロコシ価格の上昇に伴う生産コストの増加により、1頭当たりの損益分岐点価格が上昇しており、収益を確保するために、生産サイドにおいて増産を抑制する動きが出てくる可能性もある。今後の豚肉生産の動向が注目される。 |
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