小麦、トウモロコシ、大豆などの国際価格は上昇
小麦の国際価格は、ロシア、ウクライナ東部、カザフスタンでの干ばつ、カナダでの豪雨など気候変動による減産に加え、ロシア政府が決定した農産品の一時的な輸出禁止(適用期間:8月15日から12月31日まで、対象品目:小麦およびメスリン、大麦、ライ麦、トウモロコシ、小麦粉または小麦・ライ麦粉)などもあり、2010年7月以降上昇している。また、この影響を受けるかたちで、飼料原料として代替性のあるトウモロコシおよび大豆価格なども値を上げている(図11)。
図11 大豆、小麦、トウモロコシ、大豆ミールの価格 |
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注:シカゴ相場の先物、期近価格(当月最終取引日の終値) |
注:黒海諸国とは、ロシア、ウクライナ、カザフスタンの3カ国。
主要国からの小麦輸出量は2ケタ増
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、今後の小麦の国際価格は、世界全体の小麦需給から判断すると、価格が高騰した2008年の水準までには至らないとの見方を示している。
この理由として、USDA/FASは、気候変動を受けたロシア、ウクライナ、カザフスタンなど黒海諸国の小麦輸出量は、前年度を6割下回る1,500万トンと急激な減少を示すが(表9)、アルゼンチン、豪州、EU-27カ国および米国など、小麦の主要輸出国は黒海諸国の不足分をカバーし、これらの国からの輸出量は前年度を2割以上上回る8,000万トンが見込まれていることを挙げている(表10)。
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(単位:百万トン、%) |
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資料:USDA/FAS(2010年8月) |
表10 米国など主要小麦輸出国からの小麦輸出 |
(単位:百万トン、%) |
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資料:USDA/FAS(2010年8月) |
米国の小麦在庫は高騰した2008年の在庫水準を3倍上回る
特に、世界全体の在庫の14%を占める米国在庫は著しく積み上がっており、在庫率(消費量に対する在庫量の割合)は80%以上、期末在庫は小麦価格が高騰した2008年を3倍以上上回る水準であり(表11)、黒海諸国の減産による影響を軽減するとしている。
なお、USDA/FASは、黒海諸国などの国で在庫が積み増されたとしても、歴史的に、自国の需給状況に応じ輸出規制などを行うことから、国際市場への需給を考える上では、直接的なつながりは強く見込まれないとの見方を以前から示している。
表11 米国の在庫率 |
(単位:百万トン、%) |
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資料:USDA/FAS(2010年8月 |
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