酪農産業再編法による競争施策のもとフォンテラは生乳を他社へ義務的に供給ニュージーランド(NZ)では、2001年9月に成立した2001年酪農産業再編法(DIRA)により、生乳および乳製品市場での競争を促進するための措置が導入された。これは、フォンテラによる市場独占状態による弊害を回避し、酪農家および消費者などを保護することや乳業メーカーへの新規参入の機会付与を目的としている。その一環としてフォンテラは、毎年60万キロリットルを上限として、他社への生乳供給が義務付けられ、乳業メーカーの新規参入を促進させている(詳細については2010年4月号海外駐在員レポートを参照)。DIRAによる競争促進措置は、1シーズンにおけるフォンテラ以外の乳業メーカーの集乳量(乳固形分ベース)が一定の条件を満たした場合、つまり、フォンテラの市場独占状態が一定水準まで緩和された場合、撤廃されることになっている。この条件は、北島と南島で異なり、北島では、島内シェアが12.5%以上になった場合であり、南島では、6万5千トン(生乳ベース:約78万キロリットル)以上、かつ、うち1社がウエストランド地方以外から2万5千トン(同:約30万キロリットル)以上を集乳するようになった場合である。NZ農林省(MAF)は、南島では2011年5月末、北島では2012年5月末にそれぞれの撤廃条件を満たすと見込んでいる。 NZ政府、DIRAによる競争促進措置の新たな撤廃条件を設定しかし、MAFは8月上旬、現行の撤廃条件を満たした場合でも、生乳および乳製品市場における競争原理は十分に働かないとして、政府内で、新たな撤廃条件を設定することについて合意したと発表した。この新たな撤廃条件とは、1シーズンにおけるフォンテラ以外の乳業メーカーの集乳量が、北島では、島内シェアが20%以上になった場合、南島では、ウエストランド地方を除く島内シェアが20%以上になった場合である。今回の決定を踏まえ、今後、DIRAの関係条項の改正手続きが行われることになる。MAFでは、フォンテラ以外の乳業メーカーの新規参入の状況や拡張の度合いを勘案すると、新たな撤廃条件を満たすのは、5〜10年後になるとみている。フォンテラは失望感を表明するも、生乳の供給受入れ要件の見直しについては期待今回の政府の決定に対しフォンテラは、原料乳の確保が十分でない操業初期段階の新規参入企業に対し、生乳を供給するという自らの役割を認識しているものの、供給先の乳業メーカーの多くが既に別の供給元を確保しており、また、外国資本により所有されている企業も増加しているとして、失望感を表明した。こうしたフォンテラの主張を受け、NZ政府は、フォンテラからの生乳の供給を受ける要件についても見直しを行うとしている。 |
元のページに戻る