メキシコ政府は8月16日、米国のトラック規制に対する報復関税対象リストに、米国の豚肉製品、チーズなどの品目を追加することを公表した。メキシコ政府の米国製品に対する報復関税措置は、2009年3月より開始されていた。
長期化する米・メキシコ間のトラック紛争
米国政府は北米自由貿易協定(NAFTA)締結以降も、安全性を理由にメキシコからのトラックによる米国内への輸送を規制していたが、同規制は2001年2月にNAFTAの紛争解決パネルにより協定違反との決定が下され、メキシコに対して報復関税の措置が認められていた。ブッシュ政権において、2007年9月より一部トラックに対し、米国内の走行を試験的に許可するプログラムが行われてきたため、報復関税は実施されなかった。しかし、オバマ政権後は同プログラムが継続されなかったことから、同プログラムが終了した2009年3月以降、メキシコ政府は報復措置として米国製品に対する関税を課していたところである。
今回の措置は、これまでの対象品目の一部を豚肉やチーズなどに入れ替えるとともに、品目数も現在の89から99へ拡大する内容となっており、豚肉製品については、骨付きもも肉および肩肉などの製品に対して5〜20%(調理済みの豚皮(ペレット)のみ20%)、チーズに対して20〜25%の関税を課すこととなっている。
全国肉豚生産者協議会(NPPC)は米国政府を強く非難
今回のメキシコ政府の発表について、豚肉生産者により構成されている全国肉豚生産者協議会(NPPC)は、「米国産豚肉に対する報復関税措置は、米国の肉豚生産者に大きな経済的影響を及ぼすであろう。我々にとって重要な市場であるメキシコが、このような措置を講じることに失望しているが、それ以上に、米国政府が貿易協定に従わない事実に対して、さらに大きな失望感を抱いている。今回の一件は、米国産業に経済的な影響を与えるだけではなく、諸外国に対して米国との貿易交渉をためらわせることになるであろう」と、今回の関税対象の拡大を招いたオバマ政権を批判している。
米国の豚肉輸出におけるメキシコ向けシェアは全体量の約20%を占めている。2010年1〜6月において、メキシコ向け輸出量は前年同期比31%増となっており、同8%増と好調を維持している全体の豚肉輸出をけん引している。
また、米国のチーズ輸出におけるメキシコ向けシェアは全体量の約37%を占めており、今回関税の対象となったチーズについては、2010年1〜6月のメキシコ向けの輸出実績が、約2万トン、5900万ドル(約50億円:1ドル=85円)に達するため、全国生乳生産者連盟(NMPF)は「今回の新たな関税措置は、2009年の赤字から回復途上にある酪農家に深刻な打撃を与えることになる」としており、オバマ政権および議会へ一刻も早い解決を要請するとしている。
今回の関税措置が豚肉、乳製品のメキシコ向け輸出にどのような影響を与えるのか、今後の動向が注目されるところである。
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